「業務スーパー」FC加盟会社、破産申請の舞台裏
北海道で7店舗の「業務スーパー」のフランチャイズ店を運営していた(株)ケヒコ(TSR企業コード:352478845、横浜市中区)と関連2社が7月23日、横浜地裁に破産を申請した。ストライキに突入した労働組合が「賃金確保のため」に店舗運営を再開した時にはすでに破産申請していた。流通業では2023年8月、西武池袋本店が61年ぶりのストライキに突入し、マスコミでも話題になったばかり。お客様の信頼で成り立つ食品スーパーの破産申請までの裏側を東京商工リサーチ(TSR)が取材した。
ケヒコの大株主は、食品雑貨類の輸出入を手掛ける(株)エス・インターナショナル(TSR企業コード:350655936、横浜市中区、以下エス・インター社)。これら2社と代表が同一の(株)広(TSR企業コード:694769517、横浜市中区)も含め、3社が同時に破産を申請した。 労組は、「代表の会社資金の私的流用や不採算事業への投資などでグループの経営が悪化したうえ、破産を検討している」として、6月29日から時限ストライキに入った。そして、7月18日から無期限ストに突入、店舗営業を休止したが、賃金確保のため24日から営業を再開していた。
エス・インター社の業績悪化
3社の経営状況の取材を始めると、順風とは言い難い状況がみえてくる。ケヒコが運営する「業務スーパー」の業績は堅調だったが、エス・インター社が足を引っ張っていた。新規事業の不振、元役員への多額の退職金計上などもあり、エス・インター社単体では改善の糸口を見出せずにいた。
労使の思惑にズレ
取材を進めると、会社側と労働組合は事前に協議していた。だが、労組が求める経営者交代や株式譲渡などを会社側が受け入れるにはハードルが高かった。会社側は、水面下で事業再生を目指す一方で、法的手続きも視野に入れていた。 ところが、「業務スーパー」店舗ストにより売上金が減少し、スト情報がネットで拡散されたことで、7月25日の給料支払が不透明になる。会社側は、破産申請の準備が事前に漏れると労組や債権者とのトラブルを避けられないと判断し、破産準備とともに密かに給与原資としての資金集めを急いだようだ。だが、労組はこの動きにも不信感を抱き、労組と会社の緊張がさらに高まった。 TSRの取材では、会社は一定の資金を集め、労働債権については相応の配当が見込まれる。 月内に横浜地裁から破産開始決定が下り、破産管財人が選任される見通しだ。今後は、破産管財人の手で財産の処分を進め、労働債権や一般債権の配当手続きに入る。 令和の時代に珍しいストライキに発展した破産事件の内情調査は今後、破産管財人に委ねられる。