「日本は貧乏な人が行く国」訪日観光客の素直な見方、「安くてコスパがいい」日本が陥っているワナ
■「日本はこんなに安くなっていいのか」 大の日本好き、今まで日本の地方を訪ね、さまざまな消費に貢献してきたB夫婦と4年ぶりに東京で再会した。自営業と金融の仕事をし、年収は少なくとも6000万円ある30代の家族だ。コロナ以来の日本なので、2週間にわたり、子どもを連れ、大阪、白川郷、京都、奈良、名古屋、鎌倉、軽井沢、東京の順で、行きたいところを再訪した。 一番お金を使ったところを聞くと、「もちろんUSJのマリオワールドだよ。3人で30万円のグッズを買っちゃった。その次に軽井沢のアウトレット。日本はこんな安くなっていいのか。心配になってきた」とつぶやいた。
その夫婦が結婚する際に、当初日本でもめずらしいハリーウィンストンの超高級リングを買ったのだが、「免税できるのはもちろん嬉しいよ。でもそれは、ほかの国でもできる。サービスがいい日本でおもてなしを楽しみたくて日本に来て買った」と教えてもらったことがある。では今回はどうか。 「物価が安すぎるし、慣れてしまったこともあってサービスは特にいいとは思わなくなった。6月にまた来るけど、ほかに買うものもないので、もう一度USJに行ってグッズを思い存分買うわ」と教えてくれた。
Aさんに比べると、B夫婦は収入も日本に対する理解も高い。円安でも円高でも、自分がほしいものがあれば為替レートに関係せず消費する。問題は、彼らが求めている「もの」「こと」はまだどのぐらいあるのか、これから、何をもって彼らにこれからもリピートしてもらい、日本の素晴らしさを感じてもらうのか、なのではないかと思った。 ■これから日本は何を目指すか 筆者はコロナ前から日本のインバウンドにおいて、他国との競争が激しくなるため、「安い」ことではなく、もっと深い文化・価値観につながる戦略を立てる必要があると提唱してきた。
コロナのロックダウンにより、中国国内の観光レベルが急速に向上し、その多くは日本の美意識やスタイルを参考にしている。今まで日本でしか体験できなかった環境は中国のあちこちで楽しむことができるようになっている。 最近では富裕層の開拓に世界が注力しており、ヨーロッパはもちろん、中東、アフリカなど、観光リテラシーの高い若い富裕層の間では中国のこうした新たな観光資源が人気になっている。 日本は、中国に近い先進国として、まず為替レートと関係なく、日本滞在中の1人当たりの消費額を増やす努力をしなければならない。そして、それを一時的な増加だけではなく、長期的に成長させる戦略を立てなければならない。