なぜ新戦力発掘に消極姿勢だった森保監督がシュツットガルトの23歳DF伊藤洋輝を初招集したのか
最終的にはリーグ戦の34試合中で29試合に出場。そのうち先発は26度を数え、14日のケルンとの最終節の後半アディショナルタイムには、左コーナーキックをニアサイドでそらし、ともに日本代表に選出されたMF遠藤航(29)の決勝ゴールをアシスト。土壇場で1部残留を決める奇跡のドラマを“頭”でお膳立てした。 2018年1月のAFC・U-23アジア選手権で、当時ジュビロ磐田U-18の所属だった伊藤をボランチで起用した森保監督は、4年半の間に遂げた変化にこう言及した。 「当時は所属チームで、中盤の選手としてプレーしていたのでボランチで起用した。そのときから何がよくなったのかといえば、守備力が格段に上がったと思っている」 ドイツで繰り広げた猛者たちとの肉弾戦を介して、一気に解き放たれたディフェンダーとしての稀有な能力が、これまでいっさい無縁だったA代表をも手繰り寄せた。 そして、森保監督も伊藤を介して新たなプランを描いている。 7大会連続7度目のワールドカップ出場を決めてから、初めて迎える国際Aマッチデー期間。日本国内では21年ぶりに対戦するFIFAランキング1位のブラジル戦を含めて、札幌、東京、神戸、大阪と臨む4連戦のテーマを指揮官はこう掲げた。 「チャレンジしたいことはたくさんあるが、まずはベースとなるコンセプトの部分をしっかり浸透させたい。ベースが整っていないのにオプションだけをつけても立ち返るところがなくなり、選手のよさもチームの力も発揮できないことになりかねないので」 アジア最終予選の途中で、システムをそれまでの[4-2-3-1]から[4-3-3]に変更。序盤でつまずいたチームが息を吹き返し、カタール行きの切符を手にした状況で新たにチャレンジするオプションとは何なのか。森保監督が続ける。 「3バックで戦うとか、システムを『4-2-3-1』にすることも考えていきたいが、すべては状況次第。チームのパワーを最大限発揮できるように、まずは軸となる部分をしっかりとやりつつ、ワールドカップへ向かっていけるように積み上げていきたい」 ワールドカップ優勝経験のあるドイツ、スペインと同組になった4月1日の組み合わせ抽選会を境に、3バックの必要性が指摘されてきた。強豪国との一戦で先に失点してしまえば、その分だけ勝ち点を手にできる確率が下がるからだ。 しかし、3バックを導入する上で、決定的な人材が欠けていた。それは左利きのセンターバック。3バックの「左」にレフティーが配置されれば、持ったボールを相手にさらすリスクが減り、左方向へボールを持ち出しながらフィードする際にもパスを放つ上でのアングルがよくなり、ボールが届く距離も右利きの選手より伸びる。