黒沢清・行定勲・瀬田なつき・森井勇佑・山中瑶子――映画監督たちが相米慎二監督を語る
■ベネチア受賞を皮切りに新たな観客に出会っていく相米慎二監督作品
昨年の「第80回ベネチア国際映画祭」クラシック部門で最優秀復元映画賞を受賞した『お引越し 4Kリマスター版』はフランスでの公開が130館以上にまで拡大し、ヨーロッパ各国や北米で注目の的に。今回、4Kリマスター版として新たに、公開当時から30年が経って再発見されたことについて行定監督は、時を経ても決して色褪せていないと話す。 相米監督デビュー作の『翔んだカップル』から観てきた行定監督は、「僕の世代は相米作品は必ず”いつ公開されるんだ”と楽しみに待望していて、すぐに観て語られるような存在」だったと語る。「相米作品は”死”の匂いがすごくある。今回上映される2作品はその匂いがしながらも、子どもたちの姿が浮き彫りになっていることで”生”の匂いもある。普遍性をテーマにして、はちゃめちゃに物語を解体したり、反対にもっと深くまで掘っていくところが相米の独自性」と、時代性をも超越していく相米作品の魅力を語り、「若い人たちには新作を観るような気持ちで触れてもらえたら、すごい衝撃になるのでは」と、想いを託すように語った。 黒沢監督からは「今回4Kリマスターされた2作品は“ひと夏の経験”を描いたもの。子どもが夏休みにこんな経験をしたというだけの話でこんなにもすごい作品ができるということも含めて、今こそ日本以外でも相米慎二監督作品を観ていただきたい」と語って、トークパートを締めくくった。 ■『お引越し 4Kリマスター版』作品情報 両親が別居。 はじめは家が2つできたと喜んだレンコも、次第に自身を取り巻く変化の大きさに気づかされていく―― 京都に住む、明るく元気な小学6年生、レンコ。父ケンイチが家を出て、母ナズナとの二人暮らしが始まった。ナズナは新生活のための規則を作るが、変わっていこうとするナズナの気持ちがわからない。レンコは、離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したり、果てにはかつて家族で訪れた琵琶湖への小旅行を勝手に手配する…。 1993年/124分/日本 監督:相米慎二 脚本:奥寺佐渡子、小此木聡 原作:ひこ・田中 撮影:栗田豊通 出演:中井貴一、桜田淳子、田畑智子、笑福亭鶴瓶 (C)1993/2023讀賣テレビ放送株式会社 原作:ひこ・田中「お引越し」 ■『夏の庭 The Friends 4Kリマスター版』作品情報 「死」への興味から、奇妙な老人と関わりを持った小6トリオのひと夏の成長記。 木山、河辺、山下の小6トリオは、祖母の葬式に出席した山下の話を聞き、「死」に興味を持ちはじめる。近所に住む一人暮らしのおじいさんがもうすぐ死にそうだ、と聞きつけた3人は、家を張り込むことに。はじめは少年たちを追い返そうとしたおじいさんも、次第に彼らを受け入れ始める。そんなとき、ひとりぼっちのおじいさんのために、3人はある計画を思いつく…。 1994年/113分/日本 監督:相米慎二 脚本:田中陽造 原作:湯本香樹実 撮影:篠田昇 出演:三國連太郎、坂田直樹、王泰貴、牧野憲一、戸田菜穂、笑福亭鶴瓶 (C)1994/2024讀賣テレビ放送株式会社 (C)1992湯本香樹実/新潮社