公益通報窓口の設置・検討企業24.1% 消費者庁長官「制度の運用、周知・啓発を見直していく」
新井長官・調査結果を踏まえて「制度の運用、周知・啓発を見直していく」
今回の調査結果をもとに、制度を所管する消費者庁の新井ゆたか長官に同制度の現状や今後の取り組みについて話を聞いた。
――今回の調査結果をご覧になった率直な感想をお聞かせください
2020年の法改正で企業に導入を義務付けた「内部通報制度」が、まだ十分に普及・浸透していないことがよく分かりました。義務対象である従業員300人超の企業でも導入していないところが多くあり、制度の運用の在り方や周知・啓発の方法を見直していかなければならないと強く感じました。 この場を借りて、企業経営者の皆さまに、改めて内部通報制度の導入意義をお伝えいたします。これまで産地偽装や品質データ改ざん、不適切会計、保険金の不正請求など数多くの企業不祥事が従業員による組織外への内部告発によって発覚してきました。なかには経営破たんした企業もありました。組織内の法令違反など、不正行為を放置すれば、それが発覚したとき、その企業は取引先や消費者からの信用を失い、最悪の場合、経営者や従業員は職や地位を失うことになるかもしれません。
――制度の形骸化が懸念される一方、SNSによる情報流出が目立っています
私が農水省の課長時代、産地偽装問題の対応に追われました。そのなかで分かったことは、儲けようと故意に不正を犯す企業は少なく、現場に余力がないなかで、顧客の要望に応えようと無理をして不正を犯してしまう企業が多いということでした。リスク管理の観点からは、現場の情報が速やかに経営者に届く仕組みが必要だと考えます。 内部通報制度は、組織内の不正行為について従業員や役員からの通報を受け付けて調査・是正する制度です。消費者庁が2016年度に実施した調査では、不正発見の端緒の第1位は「内部通報」(回答企業の58.8%)で、第2位の「内部監査」(同37.6%)を大幅に上回っています。実際、企業のなかには、現場や子会社のリスク管理に内部通報制度を積極的に活用しているところもある一方で、不祥事が発覚した企業では、制度を導入していないことや、導入していても、「従業員からの通報が1件もない」「従業員が通報窓口の存在を知らない」など、制度が形骸化していることも多いです。 近時は、SNSの普及で、ネガティブな情報がいったん外部に流出すると、瞬く間に拡散してしまいます。今は、不正に関する情報を隠しておけない時代です。内部通報制度を活用して、現場の不正行為を早期に発見し、調査・是正を図る必要があり、これが企業や従業員を守ることにつながります。