パチンコの店長が自死、遺族補償の給付決定 労基署は「不支給」判断→審査請求で逆転
●業務による心理的負荷の強度は「強」だったと認定
審査官による決定では、審査官が精神専門部会の医師に改めて意見を求めたところ、同医師が適応障害を発症していたと考えられると申述し意見を変えたことから、男性は自死当時、「適応障害」を発症していたと判断した。 経営に重大な影響のある新規事業で業務の難易度が高い二店舗同時運営の店長として、複数名で担当していた業務を1人で担当することとなり、業務内容・業務量が明らかに増大したと考えられることから、これに伴う責任の増加、業務密度の高まり等を考慮し、男性の心理的負荷の強度は「強」だったと認定。 男性の発病した精神障害は業務上の事由によるものと結論づけ、遺族補償給付および葬祭料を支給しないとする監督署長の処分を取り消した。 男性の妻の代理人をつとめた河村洋弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「労基署が、請求人や使用者が提出した資料をしっかりと見ていなかったのではないか」と労基署側の対応や判断を批判し、次のように話した。 「(遺族側に)弁護士がついているケースでも、労基署がこのようなずさんな判断をしたということは、弁護士がついていないケースだともっと粗雑に扱われているのではないかという疑念を抱きます。 今回の事件は、記録上1カ月80時間を超える時間外労働が認められない事案でしたが、『新規事業や大型プロジェクトなどの担当になったこと』と『複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった』ことを理由に業務による心理的負荷を「強」と判断した点が特徴的です。 立証の点では、男性が務めていた企業(使用者)が勤務に関する資料を提供してくれるなど(遺族側に)協力的だったということも、審査請求でこちらの主張が認められるうえで大きかったです」