手帳の季節、長く続けてほしい「文化手帖」30年愛用、何より便利なスケジュール記入 文藝春秋の「文藝手帖」は発行終了へ
ちょっとプライバシーにかかわることを書いた部分もあるので、ぼくが死んだら、棺桶に一緒に入れて焼いてくれ、と言ってある。
ぼくはスマホが嫌いで、使ってないから(いまだにガラケー。ガラケーとiPadミニで十分)、もしこの手帳を落としたら仕事にならない。むろん、コピーも取っていないし。
ところが、今年、夏の初め、落としたのである。
立ち寄った喫茶店、本屋、昼食をとったレストラン、必死に電話をかけたが、ない。
先の予定がわからないのが一番困る。会う約束をしていたら、相手に申し訳ない。明日、明後日ならともかくそんなに先の予定までは頭に入ってない。
絶望的になったが、念のためタクシー会社に電話をしてみた。タクシーで手帳を取り出した覚えはないから、念の為、ほんとうに念の為だった。
が、あったのである。
「黒い革の表紙のやつですね」
財布を出したときに落としたのだろう。
タクシー会社の担当者を拝みたくなった。
『文化手帖』は、今後も長く続けてほしい。(月刊『Hanada』編集長・花田紀凱)