「電気が消えなくなった」「今やっている病院は?」とかマジか! 最近「救急車」の「現場到着時間」が延びている要因に「緊急性のない」通報の増加があった
20年前から徐々に救急車の現場到着所要時間が増えていった
自宅で急に体調を大きく崩したり大きな怪我をしたとき、また交通事故に遭遇して負傷したときなど、救急自動車を要請する場合がある。 【写真】皆さんは大丈夫? このゼブラゾーン、停車中に入ったらNGですよ! 総務省消防庁が毎年度公開している資料「救急救助の現況」には、救急出動に関するさまざまなデータが記載されている。直近の令和5年度版(救急編)によれば、同年度4月1日現在の緊急業務実施体制は、消防本部数722、救急業務実施市町村1690、救急隊数5359、救急隊員数6万6616人、そして救急自動車保有台数は6591台だ。また、救急出動件数(令和4年度)は、722万9572件で、搬送人員は621万7283人となっている。 そして、現場到着所要時間(入電から現場に到着するまでに要した時間)は、全国平均で約10.3分。所要時間を分類すると、3分未満0.6%、3分以上5分未満が2.8%、5分以上10分未満50.7%、10分以上20分未満が41.2%、そして20分以上が4.8%となる。 また、現場到着所要時間を年度別の推移でみると、同資料の表記でもっとも前である20年前の平成14年度から概ね右肩上がりとなっていることが分かる。 平成14年度は6.3分であり、なんと4分も増加しているのだ。その理由として、119番通報の増加が挙げられている。
緊急走行している救急車をいかにスムースに走らせるかが重要
東京消防庁によれば、令和5年中に受けた119番通報は110万2956件。これは現在の統計システムで集計してから過去最多。 問題なのは、そのなかの約2割が「緊急性のない問い合わせや、消防に関係のないもの」だというのだ。実例としては「いまやっている病院を教えてほしい」、「症状の相談がしたい」、「電気が消えなくなった。なんとかしてほしい」などがある。 東京消防庁は、不要不急の通報を減らすことが都民のみなさんの安心安全につながるとして、救急自動車の要請に対する理解を求めている。 救急自動車に対して、技術の面から現場到着所要時間を短縮したり、または救急自動車の安全かつスムースな走行をサポートする動きもある。たとえば、トヨタが導入を進めているITSコネクトでは、一般ドライバーが運転するクルマのどちらの方向から救急自動車が接近しているかをドライバーに表示や音などで知らせる仕組みがある。 車内で音楽などの音量が大きくて救急自動車のサイレンが聞こえにくい場合など、こうした機能が有効であり、また早めに道路脇に一時停止して救急自動車の走行への支障を減らすことが可能となる。 消防庁が名古屋市と豊田市で以前に行った実証実験では、救急自動車が走行する主要道の合計16の交差点間で、救急自動車の緊急走行時間が平均7.7%短縮している。 こうした技術対応はあくまでもバックアップとして考えるべき。大事なのは、国民ひとりひとりが救急自動車による円滑な活動をサポートする意識をもつことだ。
桃田健史