ユニクロが「マニュアル」よりも「原理原則」を重視するワケ…生産性を大きく左右する「仕事のルール」
「マニュアルのみでは生産性は上がりません」「マニュアルに依存しすぎるのは危険です」……。そう指摘するのは、新刊『ユニクロの仕組み化』の著者で、元ファーストリテイリンググループ執行役員の宇佐美潤祐氏だ。なぜユニクロはマニュアルより「原理原則」を大事にするのか、なぜマニュアルだけではダメなのか、その理由を宇佐美氏が語る。 【写真】心ない人に「マウンティング」されたら使いたい…相手をビビらせるフレーズ
マニュアルのみでは生産性は上がらない
みなさんの中には「原理原則って、業務のオペレーションを具体的にどうするかをあらわすものではないの?」と思われた人もいるはずです。 経営理念を「自分事化」して日々の業務に生かすには、具体的なオペレーションの方法を示した方が効果的に映るかもしれません。たとえば、返品にはどう対応するか、服の陳列をどうするか、クレームの際には何に気を付けるかなどです。 もちろん、こうした対応策も重要ですが、具体的に細かくどう動くかを示すのはマニュアルです。ユニクロにもマニュアルはもちろんありますが、原理原則とマニュアルは違います。原理原則にはオペレーションについては一切書かれていません。 では、なぜマニュアルだけではダメなのでしょうか。マニュアルがあれば、働いている人は何をすればよいかがわかります。トラブルの対応なども細かく書かれています。でも、マニュアルのみでは生産性は上がりません。 なぜならば、マニュアルには「What」とそれをどう実践するかの「How」しか書かれていないからです。「Why」の答えが一切ありません。「何をするか」は書かれているのですが、「なぜやるか」が書かれていません。 「なぜやるか」を示さずに「何をやるか」だけ書かれているのがマニュアルです(もちろん、「なぜやるか」について少しは触れているマニュアルはありますが、全ての行為について書かれていることはほとんどありません。マニュアルとして非常に使いにくくなるからです)。
「なぜやるか」がわかれば応用できる
会社の規模が小さければ、マニュアルだけでも十分かもしれません。経営者の目が全てのメンバーに行き届きますので、何か問題が起きたり、働いている人が疑問に思うことがあったりすれば、経営者自らマニュアルの意図を説明することもできます。 ただ、組織が巨大化すると現実的には不可能です。「なぜやるか」を明示する必要が出てきます。 「なぜやるか」を示すことは、会社がその行為の背後にある考え方を示すことになります。働いている人は、根っこの考え方がわかれば応用できます。 WhyがなくてWhatとHowしか書かれていないと、そこに書いてあることを書いてあるままにしかできません。「マニュアル人間」という言葉がありますが、マニュアルに書いてあることだけをそのままやる人間を育てることになります。 想定されていることが起きたときに対応するのも大切な業務ですが、現実の経営は想定通りのことばかりではありません。むしろ、想定していない事態がほとんどです。困難に直面して「マニュアルにどう書かれているんだっけ」と探したところで、解は見当たりません。 たとえば、店舗のお客さま対応で予測していなかったことが起きたとします。通常の企業ではマニュアルで起きている状況に近いものを探し、マニュアルに則って対応しますが、うまくいかない場合がほとんどでしょう。 また、マニュアルに答えがないから、慌てて責任者に連絡して、自分の代わりに収束に向けて対応してもらうかもしれません。