仕込み水に自信あり 福井の隠れた銘酒を掘り起こす
辛口において天下一品「常山 純米超辛」
初めに出された料理が「真鯛の昆布じめ」。日本海の白身魚はきめが細かく、その身を福井梅の香りと塩分を閉じ込めた煎り酒をつけていただく。「料理を食べながら、この酒を飲んでみてください」。杯に注がれたのが常山酒造(福井市)の「常山純米超辛」だった。すっきりと切れる辛口だ。「特にじめじめとした梅雨どきに、『とりあえずビールで一杯』というときの代わりになる日本酒です。常山は辛口に定評があります。辛口において天下一品です」と原崎さんは断言した。 同酒造の専務・常山晋平さんに聞くと、「福井は魚介がうまいので、重い酒ではなく、切れ味のある酒を作ってきました。辛口がベースですが、米の旨味もあるんだということを分かっていただければ嬉しい」と話す。酒を口に含みながら、原崎さんに「ほのかな旨味も感じますね」と感想を話すと、「これなら、どうだ」とばかりに、田邊酒造(永平寺町)の「越前岬 6号酵母」を出してくれた。同じ旨味でも、越前岬の旨味の方が強い。昆布じめのような淡白な料理とこの酒を合わせると、料理の味よりも越前岬の旨味の方が勝ってしまう。
歴史ある酵母を使った発酵力「越前岬 6号酵母」
しかし、この越前岬を濃い味付けをした大野市・上庄の「里芋の煮っころがし」と合わせると、今度は転じてバランスが良い。もちっと固く、皮ごと煮ているので香ばしく、そして醤油のしっかりとした味に6号酵母の味がついてくる。「合わせ方は好みです。しっかりした料理の味としっかりした地酒で合わせましたが、同じようなトーンで寄り添うような合わせ方もできます。いろいろありますよ」と原崎さん。 6号酵母は、日本醸造協会が頒布する歴史ある酵母だ。「越前岬 6号酵母」は、その酵母を使う。今も使われている酵母としては最も古く、華やかな香りが好まれる時勢のなかでは、穏やかだが、発酵の力が強い。そのため田邊酒造では、新酒を出さず、半年寝かせてから出荷する。同酒造の杜氏・田邊丈路(じょうじ)さんは、「確かに香りは見立ちませんが、料理との相性を考えたときに、この酒は料理と組み合わせたとき使いやすいお酒になっていると思います。一杯目のインパクトではなく、料理と合わせ二杯目、三杯目と飲んでもらえるような、そういう酒です。作りたいお酒が作れました」と胸を張る。