【日本代表】地元広島での君が代に涙 森保監督W杯での「新しい景色」に向け「さぁ行こーぜー」
<W杯アジア2次予選:日本5-0シリア>◇6日◇B組◇最終節◇Eピース 日本代表の森保一監督(55)が故郷に錦を飾った。地元・広島で行われたシリア戦で5-0と圧倒し、2次予選を史上初の全試合完封勝利で突破。2万6650人の観衆から大喝采を浴びた。J1広島監督時代に建設実現に自らも動いたエディオンピースウイング広島に代表監督という立場で戻り、万感の思いから涙した。2年後に迎えるW杯北中米大会に向け、気持ちを新たにする1勝となった。 朱に染まる空を見上げ、胸に去来したものは何だったか。キックオフ直前、エディオンピースウイング広島に君が代が流れる。森保監督の目には、あふれんばかりの涙が視界を遮っていた。君が代に目を潤ませるのは定番だが、いつもならここまで涙しない。「国歌を歌っている時は日本人である誇りと喜び、幸せがあふれ出ます。それに広島で代表戦をできたという二重の喜びで涙が出ました」。そう言って笑った。 広島のど真ん中に誕生した「まちなかスタジアム」。J1広島の監督時代、建設実現に向けて活動した1人だ。日本代表戦としては、04年7月4日のスロバキア戦以来となる広島開催。日本代表監督として広島に戻り、自身が深く関わった場所に立った。長年描いていた夢が成就した。 日本サッカーが長年抱えているW杯16強の壁。そこを突破するため新たな戦術を取り入れている。今回の代表活動から「攻撃的3バック」を採用。戦術をチームに深化させるためシリア戦でも前半は板倉を中央に左に町田、右に冨安を並べた。狙い通り攻撃力が特長のアタッカーを両サイドに並べられる利点を活用し、攻守に圧倒してみせた。 後半になるとMF中村に代えてDF伊藤を左サイドに投入し、今度は4バックへとシステム変更。「冨安を右サイドバックで起用したが、ほかも含めて戦術、システムを変えて可能な限り複数ポジションでプレーすることがチームのオプションになる」。森保監督の自在な采配が色濃く出た。 そのチームにおける一丁目一番地となるのがハードワークだ。「アジアでより確実に勝てるように、世界で勝てるように、W杯で優勝できるように。全員攻守というのは絶対に必要だと思っている」。9月から始まる最終予選に向け、アジア杯での悔しい経験を糧にし、さらなる成長を誓う。 長崎、広島という2つの被爆都市を故郷に持ち、サッカーを通じて戦争のない平和な世界の創生を願う心優しき指揮官。「さぁ、どこまでも行こーぜ、モリヤス、ニッポン、オーオーオーオー!」。そうサポーターが歌ったチャントに応えるべく、勝利と平和という2つのミッションをコンプリートさせた。【佐藤隆志】