本格稼働はいつ?TSMC熊本工場 製品出荷へ秒読み段階…誰も知らない稼働日
熊本県菊陽町に進出した半導体受託製造世界一のTSMC。去年10月に製造装置の搬入をはじめ、今年2月には開所式を開くなど製品出荷への準備を進めてきました。2024年末までに本格稼働するとされてきましたが、その具体的なスケジュールは明確になっていません。 【動画特集】TSMC熊本工場 誰も知らない稼働日 その理由は? KABの取材に対しTSMCは「本格稼働日を公表する予定はなく、セレモニーも開かない」と返答。熊本県の木村敬も「TSMCサイドから、具体的にこの日を持って本格稼働ということは聞いておりません」と語ります。関係自治体ですら把握できていないのが現状です。
「製品評価を行っているところ…」
TSMC熊本工場を運営するJASMの堀田祐一社長は、11月16日、次のように話していました。 「お客様との関連もあるので(本格稼働の)正確な日にちについては決まっていません。私どものJASMのラインで試作を行って、兄弟工場の台湾の工場と同じ性能が出るところまで確認しています。今はお客様の製品評価を行っているところです」
「本格稼働」の意味合い…明かさない戦略?
そもそも「本格稼働」とは? 元ソニー技術者で熊本大学の鈴木裕巳特任教授は、2つの段階に分かれると語ります。 「納入した、搬入した設備の条件出しを行って、装置が稼働しだすというのが一つの定義だと思います。試作が行われて、試作品をお客様に提出して、お客様に評価してもらって、問題ないというお墨付きをいただいて、じゃあ生産を開始しようという、二つ目の本格稼働という言い方になるかと思います」 ソニーをはじめ日本企業では、稼働に合わせてセレモニーを行うなど華々しくPRするのが慣例ですが、TSMCが公表しないのは、稼働日や出荷日を公表することによって、生産スピードが同業他社に知られてしまうおそれがあるからではないかと推測しています。
「生産数も多い、リードタイムも短いというのは、優れた生産能力をもっている会社なんですけど、そのノウハウは門外不出なので、リードタイムをあまり知られたくないというのはあると思います。同業他社に、生産能力の指標となるようなものを明かしたくないという」 競争の激しい半導体製造のトップを走るTSMC。熊本から世界への出荷が人知れず始まります。 (くまもとLive touch「TSMC本格稼働直前シリーズ①」より)