減税旋風、地方でも爆発 名古屋市長選、広沢氏が初当選 大塚氏、増税派イメージ覆せず 「国民民主も今回は自民と組んで党の色失われた」
河村たかし氏後継 衆院選で当選した河村たかし氏の市長失職に伴う名古屋市長選は24日投開票され、日本保守党推薦の元副市長、広沢一郎氏(60)が、自民、立憲民主、国民民主、公明の各党推薦の前参院議員、大塚耕平氏(65)らを大差で破り初当選した。河村氏に後継指名された広沢氏は「市民税減税」などを訴えて支持を集めた。衆院選では「103万円の壁」撤廃などを掲げた国民民主党が躍進したが、地方でも「減税派」の勢いが加速している。 【写真】名古屋市長選で初当選を決め、前市長の河村たかし氏から水をかけられる広沢一郎氏 「政策と理念引き継ぐ」 広沢氏は選挙戦で市民税減税率の5%から10%への引き上げや市長給与削減、名古屋城天守閣の木造復元事業の推進を掲げた。当選を決めた24日夜、「河村氏の政策と理念を引き継ぐということが、有権者に響いた」と強調した。 日本保守党の百田尚樹代表は同日、ユーチューブを生配信し、「名古屋市民が素晴らしい選択をした。15年間の河村市政が無駄にならなかった。河村さんがやってきたことは日本の多くの市町村がやらなければならないことだ。減税することは同時に経済を復興していくということだと、多くの国民が共通認識として持てば日本の政治は変わっていく」と語った。 大塚氏は4党が相乗りで推薦し、選挙戦を有利に進めるとみられていたが、当初、減税などの政策に関し「市民や有識者の意見を踏まえて判断する」と態度を明確にせず、X(旧ツイッター)では「大塚耕平は増税派」との書き込みが続出した。選挙戦中盤以降、学校給食、公共交通機関の敬老パス、がん検診の費用負担をゼロにすると打ち出し、終盤の22日には国民民主党の玉木雄一郎代表とユーチューブの生配信に出演し、同党に所属していたことを踏まえ「元祖減税派」と強調したが、及ばなかった。 共同通信社などが実施した出口調査では、次の市長に力を入れてほしい政策は「医療や福祉の充実」が24%と最多で、次いで「経済政策」が22%。河村氏が進めた「減税政策の維持」が18%だった。 国民全体の所得に占める税金や社会保険料の負担の割合を示す「国民負担率」は22年度実績で48・1%に達し、国民に〝重税感〟は強い。
政治評論家の有馬晴海氏は「衆院選でも日本保守党を国政政党に押し上げた河村氏の力は大きかった。減税をしようという姿勢は庶民的な河村氏の人柄も相まって受け入れられており、名古屋市民が河村市政の継続を望んだという大きな流れがあった。同じく減税方針で注目されている国民民主党も、今回は自民党と組んだことで党の色が失われた感があった」と分析した。