米セレブが問題提起した男女間の賃金格差 解決には“100年”必要?
ハリウッド女優も主演男優との格差を訴え
ロビン・ライトはハリウッドを代表する女優で、「フォレスト・ガンプ」や「メッセージ・イン・ア・ボトル」、「エベレスト」を含む、多くの大作にこれまで出演してきました。2013年からはネットフリックスが配信する政治ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」に主役級で出演しており、日本でも配信されているこのドラマはネット配信で公開されたドラマシリーズとしては史上初となるエミー賞も受賞しています。 先月17日にニューヨークで行われたロックフェラー財団主催のイベントにゲストスピーカーとして参加したライトは、ハリウッドにおける男女間の給与格差について言及。複数の米メディアの報道によると、昨年放送された「ハウス・オブ・カード」のシーズン3でライトに支払われたギャラは1話につき約42万ドル。ライトと同じ主役扱いで、ドラマの中ではライトの夫で米下院議員を演じるケビン・スペイシーには、1話につき約50万ドルが支払われていたと報じられています。ライトはある時期に番組の制作陣に「ケビン・スペイシーと同じギャラにしてほしい」と直訴し、ドラマのキャラクターの人気度や反響などを記録した統計データをもとに自ら交渉し、それによってギャラの格差問題が解消されたことを明かしています。 「ハウス・オブ・カード」のシーズン4は3月から配信されており、一部報道ではケビン・スペイシーの1話あたりのギャラはテレビやネット配信のドラマでは史上最高額となる100万ドルに達するのではという話も存在します。ロビン・ライトのシーズン4のギャラの総額に関しては不明ですが、ケビン・スペイシーにかなり近づいたのではないでしょうか。
40年間で是正傾向も現状はまだ平等と言えず
スポーツやエンタメの世界から男女間の給与格差の是正を求める声が相次いで出されましたが、アメリカ全体を見渡しても、まだまだ男女における給与格差には大きな開きがあります。 1881年に設立され、男女間の教育や給与における格差解消を目指して活動する米大学婦人協会(AAUW)は今春、最新の男女間の給与格差における調査報告を発表。2014年の段階で、アメリカ国内のフルタイムで働く女性の平均給与は、同じ環境で働く男性の79パーセントしかありませんでした。業種や、ポジション、働く地域によっても条件は異なりますので、これはあくまでも平均値ですが、男女間で給与格差がある事実は否めません。1974年の調査ではフルタイムで働く女性のサラリーは、男性の59パーセントしかありませんでした。40年で79パーセントまで上昇しましたが、この10年はそれ以前よりも伸び率が高くなく、このままの状態が続けば、男女間給与格差の解消には100年近くかかってしまうとAAUWは警鐘を鳴らしています。 日本ではどうでしょうか?経済開発協力機構(OECD)に加盟する34カ国の中では、韓国と日本が男女間の給与格差でワースト2カ国になっています。2014年の調査ですが、日本では男女間で30パーセント以上の差が存在します。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2012年の段階で、男女間の給与格差は約70パーセントでした。1980年代後半に60パーセントしかなかったことを考えれば、約15年で10ポイント上昇し、2000年代からはアメリカよりも上昇率が高い点も特筆すべきですが、ジェンダー間での給与格差解消にはまだまだ時間がかかりそうです。 (ジャーナリスト・仲野博文)