冬の風物詩「ザザムシ漁」解禁 長野県伊那谷の天竜川水系
長野県伊那谷の冬の風物詩「ザザムシ漁」が1日、天竜川水系で解禁された。天竜川漁業協同組合(伊那市)から「四手網」の許可を受けた組合員2人が同市山寺の天竜川右岸から入渓し、浅瀬の川底をかき回して石に生息する水生昆虫を捕獲した。 ザザムシはトビケラやカワゲラなどの幼虫の総称。上伊那地方では冬の貴重なたんぱく源としてつくだ煮にして食べる。天竜川漁協によると、昭和50年代は解禁日に70人が繰り出してにぎわいを見せたが、肉や魚が流通するようになって減少。許可者は昨年が11人、一昨年は8人だった。 1日は、伝統漁法を受け継ぐ漁師歴50年の農業中村昭彦さん(80)=同市中央=と、5年ほどになる会社員原雄一さん(74)=同市東春近=が、許可証を頭に巻いて川に入った。くわで川底の石を裏返して川虫を流れに乗せ、下流に置いた手作りの四つ手網で”一網打尽”にしていた。 ザザムシ漁はお盆すぎに大雨が降って増水すると、石と川虫が流れて収穫量が減少する。今年は11月2日の大雨で漁場が荒れたという。解禁日の川虫は小ぶりで量も例年の2~3割と少なかったが、中村さんは「ザザムシ漁は年中行事。伊那にしかない食文化を残していけるよう頑張りたい」と笑顔を見せた。 天竜川漁協の伊藤伸一組合長(55)は「伝統漁法と貴重な食文化を絶やしちゃいけない。無形民俗文化財として残せたら」と話していた。 この日の天竜川の水温は10度ほど。4度以下に下がると身が締まり、脂が乗ってくるといい、漁は12月下旬~1月上旬に最盛期を迎える。