「筑波スピリットは何があっても変わらない」筑波大学女子バレーボール部・中西康己監督
~選手個々が感じたことを言語化して話し合って欲しい
練習の質を高める中で大事にするのが、選手たち自身が気付いてコミュニケーションを取り合うことだ。 「自分たちで考えて話し合いながらやることで、できることも増えてくると思います。指導者から言われたままやるのではないので、選手同士の組み合わせが変わっても柔軟にできるはずです」 「練習中に私から選手に対してかける言葉や要求も変化しています。以前は細かい部分まで『こうしたらどうだ』と指導していました。今は選手自身に話し合ってもらうような、疑問を投げかけるようにしています。だから選手同士の話し合いが少なくなると、私からの問いかけが増える時もあります」 「選手同士が話し合うことでチームを構築して欲しい」と願う中で障害になっているのが、練習中に選手自身が行なうワイピング(=拭き掃除)だ。 「体育館の床が梅雨時期から夏場は湿気でウエットな状況になります。状況に応じて床に石灰を撒いてプレーすることさえある。ひどい時はワンプレーごとに選手みんなで床を拭きます。床を拭いている時間を選手同士が話し合う時間に使えればと思います」 「うまく行かない時、逆にプレーがバッチリハマった時。それぞれが感じたことを言語化、選手同が共有することで形としても残りやすいはずです。1プレーごとに一言でも良いからコミュニケーションを取れれば、チームとして大きく成長できると思います」
~上を目指し続けるために無理をしてしまうことが心配
「筑波大でのプレーを選んだバレーボーラーたちのスピリットは、以前と何も変わらないですよ」 中西監督は2019年の第6回ジャパンコーチズアワードで優秀コーチ賞も獲得した名将。長きに渡る指導歴の中、環境や時代の変化とも向き合ってきた。「Z世代」と言われ何かと話題になる年代の学生たちとの向き合い方についても聞いてみた。 「筑波大でプレーする選手たちは才能に恵まれている。高校までの実績を備えている人も多く、何よりバレーボールへの情熱が強い。『バレーボーラーはこうあるべき』と言う確固たる信念を感じさせてくれる。時代や世代などを感じることはありません」 「気持ちが入り過ぎることで無理をしてしまうことが心配。気候条件や練習環境等がきつい中、無理してはいけないところでも頑張ってしまう。そこをしっかり見極めてストップをかけてあげるのも我々の大きな仕事です」 「選手は常に上を目指して、自分が納得できるまでのプレーを追求する。だから、『練習量を減らす』ということに対して恐怖すら感じることもあるのではないか。そこの兼ね合いをうまくやって、試合の日にピークを迎えさせてあげたいと思います」 世間で言われる「時代の変化」はコート上では感じない。筑波大の伝統を創り上げてきた先輩たち同様、今の選手たちもアスリートとしての考え、心構えを十二分に持っている。 「筑波大のスピリットは在学中だけでなく卒業後も続きます。4年間頑張った後も競技を辞めることなく、次のカテゴリーや日本代表で頑張っている選手も多い。他にもさまざまな形でバレーボールに携わっている。バレーボールをさらに好きになれて成長できる学校ではないでしょうか」 筑波大はバレーボールへの大いなる情熱と向上心を持ったアスリートたちが、人間としても成長できる最高の場所のようだ。
「チーム全体で苦しんでいますが、その分だけ後で得られるものがあるはず。さらに成長できるチャンスだと思います。全てをぶつけて結果を手に入れられるように全力を尽くします」 山あり谷ありの大学バレーボールは人生の縮図のようだ。「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする」と述べた人がいたが、競技は違えども同様のことが言える。 2024年シーズンもまもなく後半を迎えるが、今季終了後に筑波大女子バレーボール部がどの位置にいるかが楽しみ。とびきりの笑顔と共に、選手の誰もが大きな成長を得ているはずだ。 (取材/文/写真・山岡則夫、取材協力/写真・筑波大学女子バレーボール部)