まだ生きているような欧州のミイラ、「トーロンマン」とは何者だったのか、約2400年前
消えた「体」と残された謎
75年近く前に発見されたとき、トーロンマンの頭部は慎重に保存処理が施され、デンマークで展示された。しかし体の方は乾燥して、なんと行方不明になってしまった。 それから数十年間、トーロンマンの手足や内臓がどこに行ったのか、誰も知らなかった。1980年代に入って最新技術を手にした研究者たちは、改めてボグボディーの体の研究価値に気づいたものの、現物がどこにも見当たらない。そこで、行方不明になった体の部分を探してほしいと一般大衆に呼び掛け、奇妙な宝探しが始まった。 すると、バラバラにされた体はデンマーク中の博物館や研究機関に分散していたことがわかった。見つかったものを全て集めてみたが、内臓と右足の親指だけが欠けていた。親指の方は、しばらくして元管理者の男性が死亡した後、その子どもたちが博物館に返却してきた。 シルケボー博物館のウェブサイトには、次のようなメッセージが掲載されている。「おかげさまで、トーロンマンの体はほぼ全て当博物館に戻されました。後は、どなたか内臓らしきものが入った謎の瓶を見つけられましたら、ぜひご連絡お待ちしております」 トーロンマンの遺体はこれからも新たな情報をもたらしてくれる可能性があるが、今のところその組織から古代のDNAを取り出せてはいない。
文=ERIN BLAKEMORE/訳=荒井ハンナ