最古の光る生物は5億4000万年前のサンゴと判明、約2億年記録更新、「ここまで古いとは」
「これは偶然とは思えません」
発光の目的はともかく、デレオ氏らは、八放サンゴを使って大胆な研究を行った。最古の生物発光を見つける挑戦だ。 そのベースとなったのが、2022年に学術誌「Bulletin of the Society of Systematic Biologists」に発表された、200近い種の遺伝データを使った八放サンゴの最新の詳しい進化系統樹だった。 デレオ氏らはまず、さまざまな系統同士の関係を浮かび上がらせるために、年代がわかっている八放サンゴの化石種を系統樹に追加した。さらに、現存する光る種の枝を追加し、その祖先が発光する確率を統計分析によって割り出した。 そして最終的にたどりついたのが、ほぼ確実に発光することができた八放サンゴの共通祖先が生存していた、5億4000万年前という時代だった。 「この共通祖先が存在していた時代は、かなりの確率で数億年前だろうと考えていました。しかし、ここまで古いとは思っていませんでした」とデレオ氏は言う。 生物発光の歴史がカンブリア爆発までさかのぼれたのは、すばらしい発見だ。コプリー氏は、「このころに生物が目をもちはじめたことがわかっています」と言う。それと同時期に生物発光が登場したというのも、納得できる。「これは偶然とは思えません」 ただし、このころの発光が現在の防犯装置のような目的で使われたとは考えにくい。「この発光は、どちらかというと副産物的なものだったのではないかと考えています」とデレオ氏は言う。別の化学反応によって、意図せずに光るようになったということだ。「しかし、コミュニケーション、つまり光による合図など、重要な機能を担うようになったので、生物発光反応が維持されるようになったのでしょう」 生物発光の起源は、カンブリア期よりもさらに昔にさかのぼる可能性もある。この時代よりも古い化石は非常に少ないので、最初の発光生物の証拠をつかむことはできないかもしれない。しかし、現在のさまざまな生物が光を放つことができ、研究者たちがこの驚くべき能力を研究できるのは、その最初の発光のおかげだ。 「発見すべきことは、まだまだたくさんあります」とデレオ氏は話している。
文=Robin George Andrews/訳=鈴木和博