次世代へ繋ぐ展覧会 20周年のシャネル・ネクサス・ホールで開催
東京・銀座の「シャネル・ネクサス・ホール(CHNAEL Nexus Hall)」が20周年を機に新たな動きを見せている。10月から、若手キュレーターの育成を目指す「Hasegawa Lab」とコラボレーションした展覧会のシリーズ第一弾「Everyday Enchantment 日常の再魔術化」を開催。3人のアーティストによる、感覚に訴える作品が展示されている。 ラグジュアリーブランドの文化的な取り組みは枚挙にいとまがないが、シャネル銀座はオープンした当初から、その4階「シャネル・ネクサス・ホール」で、写真展や絵画展、若手音楽家をサポートするコンサートなどを重ねてきた。 20周年を機に、中国・北京の「UCCA 現代アートセンター(UCCA Center for Contemporary Art)」でディレクターを務めるフィリップ・ティナリが新たにアドバイザーとして就任。異文化交流や対話を通した芸術的コラボレーションのプラットフォームとして、過去から未来へ繋がる新たな展開を目指していく。 新たな取り組みとして、金沢21世紀美術館の館長であり東京芸術大学名誉教授を務める長谷川祐子をアートディレクターに迎え、次世代キュレーターの育成を目指して長谷川が主宰する「Hasegawa Labとコラボレーションした展覧会シリーズを行う。 10月、シリーズ第一弾のオープニングに際して長谷川は、「キュレーションという行為が今どんな意味を持つのか。そして、次世代の人たちがキュレーションをすることが、一体どういう形で未来につながるメッセージになっていくのか。このシリーズを通して考えていきたいと思っています」とコメント。 そのうえで、今回の「Everyday Enchantment 日常の再魔術化」について、「魔術とは、私たちの歴史に脈々と存在する、目には見えない大きな力だと思っています。今回出展してくれた3人のアーティストは、自然と人間の共生、モノとのつながりといった面でインスピレーションを与えてくれる。それこそが魔術です。ぜひ魔法にかけられる体験をしてください」と思いを語った。 展示では、Hasegawa Labの佳山哲巳とフィン・ライヤンがキュレーターとして参加し、自然に回帰するような視点を持つビアンカ・ボンディと丹羽海子、物の捉え方を問い直すような作品を生む小林椋という3人のアーティストが出展している。 ■海中に漂うなもなき生命 パリを拠点にするビアンカ・ボンディは、塩や結晶、植物などの有機物を使用するアーティスト。4つのタペストリーから構成される作品「Ebb(引き潮)」は、今年7月に発表された論文が作品のインスピレーション源となっているという。その論文とは、光が届かない真っ暗な深海で、光合成する生物ではない鉱物から酸素の発生が確認されたというもの。英国の研究チームによる、どこまでを生物と呼ぶか考えさせられる驚きの研究内容だ。 「生き物の定義を考え直さなければならないし、同時に、地球以外の惑星で生命体がいるかどうかということを探る糸口も考え直さなくてはならない」(ボンディ) タペストリーは、何かはっきりとわからない有機物が海中で浮遊し気泡が浮かんでいくような神秘的な様子を描き、生命の躍動や呼吸を表現。それぞれの作品に異なる香りを添えた。フロアに置かれたボールの塩水は、時間の経過とともに結晶化し、目には見えない小さな変化を生み出している。