「今の日本ハムとの対戦は嫌」辻発彦さんが指摘するソフトバンクの不安点、低迷する西武に足らないのは「考えながらの野球」
#辻発彦さんコラム「一所懸命」⑫ 今季のパ・リーグは、4年ぶりのリーグ優勝を達成したソフトバンクの強さが際立ちましたね。昨年までリーグ3連覇を達成していたオリックスとの優勝争いとにらんでいたので、オリックスの低迷は予想外でした。 ■デビュー前夜、高まる期待が重なり合って…【写真】 ソフトバンクは柳田悠岐がけがで離脱した後も、選手層の厚さを感じました。川村友斗ら育成から支配下になった選手たちが結果を出したことが印象的でした。主軸では、栗原陵矢の活躍が大きかったでしょうか。昨年まではけがで苦労して、今年も慣れるまでは首脳陣も心配だったのではないかな。それでも力のある選手なので、しっかり3番にはまりましたね。 指揮を執った小久保裕紀監督は勝負に厳しいのでしょう。この2シーズン、チームは終盤に停滞して優勝を逃した年が続いたから、油断しない、やるべきことをやって勝ち抜く、という姿勢を貫いていたように見えました。 チームにとっては久しぶりの優勝だから喜んでいたのも当然です。それでもクライマックスシリーズ(CS)を考えると、心配はあるでしょうね。私が監督の立場だったら、今の日本ハムとの対戦は嫌ですよ。外から見ていても、シーズン終盤は日本ハム戦で苦戦している印象があります。 西武の監督だった2018、19年にリーグ優勝して、どちらもCSファイナルステージで敗れたのがソフトバンクでした。CSを勝つには投手力が必要―。2度の戦いで、そう実感しました。逆に言えば、2年連続でファーストステージから勝ち上がってきた当時のソフトバンクは、投手がしっかりしていました。 今年はリーグ王者として下克上を目指すチームを迎える立場となるソフトバンクですが、投手陣には少し不安があるかもしれませんね。日本ハムの打線はしつこいし、終盤に劣勢をひっくり返すような試合を何度も見せていますから。 日本ハムは22、23年と最下位だった低迷を経て、今年は台風の目となる躍進を見せました。その点では、今年は最下位に苦しんだ西武も、来年以降の巻き返しに期待したいところです。 苦戦の一つの要因である打線は、現状は「線」になっていない印象です。状況を見て、勝つためにはこの場面ではこういったプレーが必要、ということが考えられていないように見られます。もちろん、技術が足りていないこともあります。若い選手は試合で経験を積むことができていますが、考えながら野球をやらないと、急にはうまくならないでしょう。 その点、ソフトバンクは安定したレギュラーで組む打線の中に若手を入れて、プレッシャーをかけないように起用しています。その選手のせいで負けた、という場面も少ないし、結果を出せば自信になる。彼らはけがをした柳田の代わりにはならないけど、うまくチームを回していますね。そういった戦い方も、優勝につながったのではないでしょうか。(埼玉西武ライオンズ元監督)