「降りろバカヤロー」停車中に中国人男性2人に囲まれてパニック急発進した被告人が“実刑判決”となったワケ
殺人未遂罪と傷害罪を認定
判決で認定された事実は次のとおり。 今年1月25日午後7時50分頃、東京都大田区内の環状八号線の路上において、30代の中国人男性のBさんに対して、Aの車の前にBさんが立ちふさがっていることを認識しながら、Aは殺意をもって、あえて発進して衝突させた。そしてBさんをボンネット上に乗せたまま、少なくとも時速57kmまで加速させ、約176m走行。その後、Aはハンドルを急に右に切り、Bさんをボンネット上から路上に転落させ、右ひざを骨折するなどの全治2か月の重傷を負わせた(殺人未遂罪)。 さらに、Aは30代の中国人男性のCさんに対して、Aの車の右前方にCさんが立っている状況を認識しているのに、あえて発進して衝突させ、左ひざを打撲するなど全治1週間の傷を負わせた(傷害罪)。
誤想過剰防衛が成立しなかったワケ
本当にAは、BさんとCさんから暴行・脅迫を加えられる危険が差し迫った状況だったのだろうか。両者食い違う主張について、江口和伸裁判長は判決で次のように認定した。 「(BさんとCさんは)車両の窓をノックし、ドアノブを引くなどしているものの、少なくとも強く叩くなどの行動はしていない。また、車両の窓は閉められ、ドアは施錠されていた。そうすると、(Bさんが)交通トラブルを起こした被告人に対し、ヒートアップして、怒鳴ったり大声を出したりしていたとしても、客観的に(BさんとCさんが)被告人に対して暴行・脅迫を加える危険が差し迫った状況にはなかったと認められる」 Aは被告人質問で、Cさんが携帯電話で電話している相手が“ヤクザ仲間”だと勘違いし、「仲間が道具を持ってきて窓ガラスを割られて、連れ去られてしまうかもと思った」と弁解。 しかし、江口和伸裁判長は「(Bさんが)ヒートアップして、怒鳴ったり大声を出したりしていたとしても、被告人が自ら110番通報をしたり、クラクションを鳴らすなど助けを求めることは容易だった」として、Aの弁解を退け、誤想過剰防衛は成立しないと結論づけた。