「降りろバカヤロー」停車中に中国人男性2人に囲まれてパニック急発進した被告人が“実刑判決”となったワケ
被告人が「過剰な防衛をしたのか」も争点に…
10月15日に開かれた初公判で、Aは起訴内容の一部を否認。弁護側も、Aは交通トラブルになっていたことに気づかず、Bさんらは事件当時「降りろ」など威迫してきたことから、被告人が「ヤクザ」などと勘違いし自身を防衛しようしたところ、誤って過剰な防衛行為をしてしまった「誤想過剰防衛」で減刑を求めた。 また、Cさんへの衝突については「急に飛び出してきたため、回避は困難だった」として、無罪を主張した。 「ヤクザか半グレなのかなと。早くここから去りたいと思っていました」(被告人質問から) さらにAは、Cさんが道路中央の安全帯に立って携帯電話で電話している姿を見て、「仲間を呼んでいると思った」と振り返る。ただ、実際はBさんとCさんは赤の他人。Cさんは110番通報をしていただけなのだ。 一方で、検察側は冒頭陳述で、Bさんらは「Aを威迫するほどの大声を発してはいない」と述べた。第2回公判ではBさんが証人として出廷したが、この際も「私は、日本語で『事故が起きましたので降りて下さい』と言いました」と証言。Cさんも「降りろ」などと命令する言葉を発していないと証言した。 だがこれに反して、筆者は法廷内の大型モニターに映し出された、後続車のタクシーのドライブレコーダー映像から「降りろ、バカヤロー」という声をハッキリと耳にした。さらに、目撃者のEさんは証人尋問で、Bさんの当時の様子を「少し怒ったような口調だったと思います」と振り返っていた。
判決の結果は…
そして10月29日、保釈中だったAは、収監を見越してか白い紙袋を2つ手に持ち、スーツ姿で法廷に現れた。手に持っていた白い紙袋は、荷物がパンパンに詰まっているようで重たそうだ。入廷時は覚悟を決めたのだろう、真剣な顔つき。 6分遅れて、午後3時6分に開廷。Aは証言台前の椅子に背筋を伸ばして座っている。すぐさま、江口和伸裁判長は大きな声で判決の結論にあたる「主文」を言い渡した。 「主文 被告人を懲役5年に処する。未決勾留日数中80日をその刑に算入する」 江口和伸裁判長は、「犯行態様は危険性が高く悪質なものというほかない」として、懲役5年(求刑:懲役7年)の実刑判決を言い渡した。その瞬間も、Aは表情を変えることなく、まっすぐ裁判官の方を向いていた。