草彅剛&中川大志が語る武士の魂「正直、面倒くさい(笑)。でも、憧れはあります」
僕の俳優としての始まりの場所
――日本で生きる俳優として、こうした作品を演じることに対する特別感や使命感のようなものはありますか。 草彅 確かに言われてみればね。まあ、言われてみればと言ってる時点でないのかもしれないけど(笑)。 ――確かに(笑)。 草彅 でもね、後付けみたいになっちゃうけど、今回、何十年かぶりに松竹の撮影所に行ったんですよ。実は僕、若い頃、それこそ今の中川くんよりも若かった頃に、『付き馬屋おえん事件帳』という山本陽子さんが主演の時代劇に出させてもらったことがあって。まだ演技の仕事を本格的にやる前で、言ってみれば俳優としての始まりの場所が時代劇であり、松竹の撮影所なんだよね。そういう原点に帰ってきたという思いがあるからこそ、この作品が僕にとって新しいターニングポイントになればいいなと思うし。古き良き時代の魂を心がけて演じたので、日本人のアイデンティティみたいなものが作品を通じて誰かにつながっていけばいいかな、とは思うかな。……俺、何かいいこと言った? 中川 めちゃくちゃ良かったです(笑)。 ――草彅さんのピンと伸びた背筋が時代劇を感じさせました。 草彅 着物を着ると、やっぱり背筋が伸びるよね。それこそ現代劇だと一瞬で終わるのが、時代劇だと着物とカツラを合わせるだけで2時間くらいかかるんですよ。その間に役づくりができていくところはあるかもしれない。撮影初日とかね、刀を差していると腰骨のあたりに当たって痛いんです。でも、体が覚えていくんでしょうね。2日目くらいからどんどん痛くなくなっていく。だから、撮影所に入ると無意識のうちに背筋が正されるというのはあると思う。 中川 それはすごくわかります。撮影所に行くと、ちょっと緊張するんですよね。あの撮影所でしか会えないスタッフの方々がいて、撮影所にしかない独特の文化があって。昔から受け継がれているものがあり、それにみなさん誇りを持っていらっしゃるので、いつもちょっとドキドキします。 草彅 所作もやっぱり現代劇とは違うじゃない? 正座をするにしても、立つにしても、現代の動きではないから、体幹が大事になる。僕は日頃から鍛えている方ではあるけど、やっぱり肉体は重要だよね。 中川 毎日着物を着て過ごしているわけではないので、意識しないとどうしてもそこに違和感が出てくるんですよね。だから、一つ一つの何気ない物の扱い方や、基本的な立ち座りを含めた動きは特に体に馴染ませなきゃなと思っています。 ――今や中川さんといえば20代で最も時代劇が似合う俳優との呼び声も高いです。改めてですが、中川さんからも時代劇への思いを聞かせてください。 中川 この映画で思いました、世界のお客さんに観てほしいなって。 草彅 そうだね。海外の人が観ても面白いと思うよ。 中川 現場で監督を見ていると、映画づくりが本当に好きなんだなというのが伝わってくるんです。監督自身が日本の時代劇へのリスペクトを持ってつくっているのが、完成した作品にも出ていて。昔ながらの時代劇の良さもありつつ、新しさもあって。 草彅 元々の話が落語だから、わかりやすいしね。 中川 完成した作品を観たときに、日本映画って素晴らしいなと思ったし、カッコいいなと思いました。日本人の映画づくりの素晴らしさ、仕事の素晴らしさがつまった映画のような気がして、本当に参加できて良かったです。 草彅 というか、中川くんは世界に出ていった方がいいよ。 中川 本当ですか。 草彅 身長もあるし、中川くんなら行ける。海外は早いうちに行った方がいいから。明日行こう! 中川 いや、早いです早いです(笑)。