すべてイーロンの「計略どおり」、トランプ政権入りで「テスラ」が得られるものとは
現時点で米国ではハンドルやアクセル、ブレーキがついていない車両の公道走行にはかなりの制限がある。いわゆるNEV(低速で走行する車両)では一部認められているが、その多くは決まったルートのみを走行するもので、一般の公道では走行が難しい。 サイバーキャブは元々ハンドルやアクセル、ブレーキがついていないデザインであり、現在のままの規制では2026年に発売したとしても多くの州で走行不可となる可能性が高かった。 しかし、トランプ政権が樹立し、主に規制撤廃や政府支出の軽減を目的とする新省の長官になるマスク氏は、こうした規制を左右できる立場となる。米国が中国のような規制の緩やかな社会となりロボタクシーが一気に普及しても不思議ではない。
移動嫌いのマスク氏がひらめいた「公共交通のシェア」
サイバーキャブ発表の場でもう1点重要だったのは、マスク氏が暗に「移動の民主化、効率化」を訴えていた点だ。 マスク氏は、車を購入し、維持費を支払いつつ1マイルを移動するのにかかるコストは1ドル以上となると語った。一方でサイバーキャブを使えば、このコストは20セントに低減できる(マスク氏は「税金を含めば30~40セントになるが」と付け加えていた)。さらにサイバーキャブと同時に発表された20人乗りのロボバンを使えば、コストは5~10セントになるというのがマスク氏の主張だ。 元々渋滞を嫌ってロサンゼルス市の地下を走るトンネルを思いついたマスク氏だけに、「移動にかかる労力とコストをいかにして下げるか」が大きな課題だったとも言える。 民主化という点では、あえてタクシー運営会社を想定せず、一般に販売することで、購入した人が車を使わない時間帯に「無人タクシー」として自分の車に稼いでもらう、いわば「公共交通のシェア」というアイデアだ。 「自分の車を空いた時間にシェア」というのはフォードがかつて推進していたが、やはり自分の車が他人に運転されるという心理的な障壁があったためか普及しなかった経緯がある。しかしサイバーキャブは運転しない、単に人を運ぶ機能のみの車両であるため、ある程度の稼ぎが期待できれば一気に普及する可能性もある。 サイバーキャブはAIビジョンによって前方や安全性などを確認、100GWクラスのコンピューティングを搭載。また、非接触充電システムを採用するためバッテリーチャージのためのプラグも存在しない。 また、空港などに車で向かい、車が自動的に自宅などに戻るとなれば、巨大な駐車場が必要なくなるため、その場所を公園などに利用できるという点もマスク氏が強調したものだ。そんな未来が訪れるかどうかは定かではないが、環境問題にも言及し、人を移動のストレスから解き放つ発言の1つとして注目すべきだろう。