「次これ観たい!」が絶対見つかる。エンタメのスペシャリストたちが「ディズニープラス」スターの高品質作品をジャンル別におすすめ
ディズニー作品だけでなく、劇場未公開の隠れた名作映画やエミー賞受賞の高品質ドラマなど、エンタメファンにとって魅力的な作品が揃う「ディズニープラス」。なかでもスターの作品は、9月に発表の第76回エミー賞で最多ノミネートを獲得した「SHOGUN 将軍」をはじめ、映画・ドラマともにぜひ見ておきたいラインナップとなっている。本記事では、常日頃から旬のエンタメを追っているスペシャリストたちによるセレクトで“いま見るべき”作品を「韓国ドラマ」「海外ドラマ」「サーチライト・ピクチャーズの映画」の各ジャンルから3~4作品ずつたっぷりと紹介! 【写真を見る】リリー・グラッドストーンが警察官を演じる「アンダー・ザ・ブリッジ」など、“いま見るべき”映画・ドラマをスペシャリストたちが紹介! ■ハイクオリティな作品群から厳選!いま熱すぎる韓国ドラマ3選 韓国ドラマが大充実しているスターには、ライトなラブコメからハードなアクションまであらゆるジャンルがそろっている。しかも1本1本のクオリティが高いうえに役者たちも魅力的で、選ぶのに苦労するくらいだ。そこで今回は“暑すぎる今夏には、熱すぎる韓国ドラマを!”というコンセプトで3本を選んでみた。 最初にご紹介したいのは「殺し屋たちの店」。自分を育ててくれた叔父の自殺によって明らかになる驚くべき秘密に、文字通り命懸けで対応するハメに陥る姪の闘いを描いているのだが、もう全話が銃撃戦&肉弾戦。その大学生の姪も、なぜか彼女をねらう殺し屋たちは当然、突然登場した謎のボブカットの女性も、これでもかと弾丸を浴び、血の雨を降らせる。サシでの勝負の時は、わざわざ武器をでっかいナイフに代えるので、観ているだけで痛さが伝わってくる。が、その徹底が痛快。配信だからこそ許されるすさまじいバイオレンスの連続で、しかも演技もアクションもクオリティが高い!日本でも人気のあるイ・ドンウクのミステリアスな魅力も活かされているが、個人的に気に入ったのはボブカットのおねえさん、クム・ヘナ。彼女のファッションとアクション、めちゃくちゃかっこいいです。 2本目は、同じく人気者のチ・チャンウク×ウィ・ハジュン共演のクライムアクション「最悪の悪」。1995年の韓国を舞台に、中国→韓国→日本という流れで荒稼ぎする麻薬密売組織に潜入捜査する刑事を描いている。家族に様々な問題を抱えて出世は不可能な刑事役のチャンウクが昇進を賭けて挑むのだが、毎回毎回、バレないかとハラハラドキドキ。笑顔がすてきだった彼が、悪と交わるなかでどんどん表情が険しくなり、平気で人を殺めるようになる。 青龍刀(?)を振りかざし、血しぶきを浴びながらヤクザを滅多斬りにするシーンは目にも痛いが、それ以上に心が痛い。彼を信じきる新興暴力団のボス役、ハジュンとの熱い関係性は、BL女子的にもおいしいオマケでもあり、さらに甘い二枚目という印象だったチャンウクの新境地でもある。それにしても韓国ドラマ、暴力描写がハンパなさすぎです! 3本目は、韓国映画界の大スター、ソン・ガンホが初めてドラマに出演したことが大きな話題となった「サムシクおじさん」。激動の時代、1960年を舞台に、韓国を変えようとする理想家の青年と、政治家や富豪の影で暗躍するフィクサーを描いたヒューマン・エンタテインメント。タイトルはガンホの役名で、その意味は「三食おじさん」。みんながとことん貧しかった戦時中においても、親族や周囲の人たちを決して飢えさせることなく三食を食べさせたことからついたあだ名で、この時代でもそれをモットーにしている。 そんな彼が目を付けたのが、貧しさに喘ぐ韓国を変えようと理想に燃える青年キム・サン。物語は政治家、軍人、富豪らを巻き込みながら、激動の時代を活写し、それぞれの信念をまっとうしようと奔走する男たちの姿を浮き彫りにする。この作品で熱いのは男たちの生きざま。“生きざま”という言葉自体、少々古い響きだが、この混沌の時代を生き抜こうとした彼らにはふさわしい。テーマ曲にドボルザークの「新世界より」を使っているのはダテじゃないのだ。 もう一つ、このドラマを観て気づくのは、韓国のドラマや映画に食事シーンが驚くほど多い理由。年配者が、まるで挨拶のように「ご飯を食べた?」と尋ねるのは、こんな時代を経験したからこそ。彼らにとって食べることには大きな意味があり、私たちが考えるよりも大切なことなのだろう。“餅”のシーンで泣きそうになった。本作も役者たちの熱演が光りまくり。サムシクおじさんを魅了する理想家、キム・サンを演じたピョン・ヨハンは、「ミセン」などで見せた顔とはもう別人。大ベテランに負けていません!(映画ライター・渡辺麻紀) ■リアルな描写にドキリ。複雑な人間性を鋭く切り取った海外ドラマ3選 ドラマ部門では、「SHOGUN 将軍」や「一流シェフのファミリーレストラン」などのエミー賞候補や大ヒット作と並び、世界中から選りすぐった幅広いジャンルと多様なテーマを持つ作品を楽しめるのが魅力だ。ここでは、シリアスな作品からコメディまで、様々なアプローチで人間の複雑さや多面性を描いた海外ドラマ3作を紹介したい。 まずは、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(23)でアカデミー賞主演女優賞候補になったリリー・グラッドストーンが出演する「アンダー・ザ・ブリッジ」。1997年にカナダで実際に起きた少女殺人事件をドラマ化し、グラッドストーンは捜査に当たる地元の警察官キャムを演じて第76回エミー賞リミテッド/アンソロジー部門助演女優賞にノミネートされた。 厳格なインド系移民の両親に反発し、不良少女のグループに加わった14歳のリーナの失踪から物語は始まる。橋の下で仲間たちから暴行を受けた彼女は、数日後に遺体となって発見された。事件の夜にいったいなにが起きたのか?キャムや執筆のために帰郷していたジャーナリストのレベッカが真相を追い続ける。ライリー・キーオが演じるレベッカは、原作である同名ノンフィクションの著者、レベッカ・ゴッドフリーをモデルにしている。 SNSが存在しなかった90年代後半、ヒップホップに夢中でギャングに憧れる少女たちの争いが招く取り返しのつかない悲劇を描くドラマは、現在も深刻な社会問題であるいじめや差別の実態に鋭く切り込む。10代の若者たちの心には見栄や嘘、冷酷さと純粋さが同時に存在する。傷つきやすくも残酷な青春の闇を演じる俳優たちは、今後が楽しみな逸材ぞろいだ。 物語の時間軸が前後するなかで被害者と加害者それぞれの知られざる一面が浮上し、さらにリーナの家族やレベッカとキャムの物語としても広がっていく。なかには思わず身につまされるエピソードもあるはず。重いけれど、目を逸らさずに向き合いたい一作だ。 続いては明るいコメディ、南カリフォルニアの新聞社が舞台の「終わってない! 40代わたしのリスタート」を紹介したい。婚約者と破局し、かつての職場に復帰したアラフォーのネルが主人公だ。彼女に任されたのは訃報記事の執筆。不満を抱えながら仕事に取りかかったネルは、ゴーストとなった執筆対象が見える能力があることに気づく。原稿がオーダーされると同時に現れ、ネル以外の人には見えない彼らと対話を重ねて書く記事は、ほかにはないクオリティで好評となる。 各話に登場する多彩なキャラのゴーストとの交流と並行して描かれる親友や、注文の多いルームメイトとの友情、職場の人間関係も“あるある”エピソード満載で楽しい。ジーナ・ロドリゲスは仕事熱心で適当にいい加減なところもある等身大のネルを演じて共感を誘う。彼女と一緒に笑ってホロリとしながら、生きるヒントを得られる。1話20数分というコンパクトさで、隙間時間にサクッと見てリフレッシュするのに最適だ。 最後は、アルゼンチンのコメディ「管理人は知っている」。ブエノスアイレスの高級アパートを舞台に、屋上にプール建設計画が持ち上がり、職を追われる危機に直面した管理人のエリセオが、勤続30年で細部まで知り尽くした住人たちをそれとなく操りながら起死回生を図る過程を描く。 腰が低くて気配り上手のエリセオは横柄な住人にも笑顔を絶やさないが、背を向けると瞬時に無表情に。愛想笑いを浮かべながら毒を吐いて相手をひるませたり、人間の二面性が皮肉とユーモアを込めて描かれている。 グローバリゼーションが進んだいま、大都市は世界中どこも同じように見えるが、それでも地域ごとの特色はある。アルゼンチン独特の日常に触れ、舞台となるヴィンテージ・マンションのモダンなデザインや住人それぞれのライフスタイルが反映されたインテリアも見どころの1つだ。(ライター・冨永由紀) ■賞レース常連スタジオが贈る、隠れた名作。サーチライト・ピクチャーズの映画4選 新しい才能を発掘する目利きのスタジオとして知られるサーチライト・ピクチャーズ。劇場用映画だけでなく、ドラマや配信用映画にも活躍の場を広げている。そのなかでも、ディズニープラスでしか観られない隠れた秀作4本をピックアップ。ここでも時代を牽引するサーチライトイズムが活かされている。 1本目は『ファイアー・アイランド』(22)。ゲイに人気の避暑地と言えば…のNY近郊ファイアー・アイランドを舞台に、アジア系LGBTQ+コミュニティの恋愛と友情が描かれる。主演にはジョエル・キム・ブースター(Apple TV+「マネー ~彼女が手に入れたもの~」)、ボーウェン・ヤン(「サタデー・ナイト・ライブ」ライター&キャスト)、そしてマーガレット・チョー(『フェイフェイと月の冒険』)といった人気コメディアンをそろえ、ジェーン・オースティンの不朽の名著「高慢と偏見」をベースに、おかしくてせつないラブコメディを作り上げた。 監督は、初監督作『Spa Night』(16)がサンダンス映画祭で注目されたアンドリュー・アン。次回作ではボーウェン・ヤン&リリー・グラッドストーン主演でアン・リーの『ウェディング・バンケット』(93)をリメイクするという要注目の映画作家だ。普段からつるんで遊んでいる仲間たちが作ったラブコメは、際どいジョークとテンポのよい掛け合いが最高。『クレイジー・リッチ!』(18)、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)と並ぶアジア系コメディの最高峰と言える。 2本目は『フレーミングホット!チートス物語』(23)。人気スナックの“チートス”の激辛味を考案し、工場の従業員から製菓会社の重役にまでなったメキシコ系男性の実話を映画化。立身物語に見え隠れする人種間の職業問題など複雑な背景を重くならずに描き、家族の親密さを全面に出した演出手腕が見事。監督は女優のエヴァ・ロンゴリアで、今作が映画初監督。ABC系列で放送されていたドラマ「デスパレートな妻たち」に主演していたロンゴリアが長らく温めていた企画で、当時ABC社員だったボブ・アイガー(現ディズニーCEO)が背中を押してくれたのだという。系列テレビ局の平社員からディズニーのトップにまで上り詰めた自分と重ね合わせていたのかもしれない。プレミアにはアイガーも参加し、新人監督ロンゴリアの熱意と才能を讃えていた。 3本目は『ノット・オッケー!』(22)。NYの出版社で働くダニは、「どうにかしてインフルエンサーになりたい」と研修旅行でパリに招待されたと偽りSNSに投稿。その直後にテロが起き、生存者として注目の的になってしまう。トラウマを克服するセラピーで銃反対運動を率いるローワンと出会い、さらに嘘を重ねることに…。虚偽の投稿でインフルエンサーとなり、どんどん歯止めがきかなくなる主人公。映画の舞台も出来事も実際にありそうなくらいリアルなのに、なぜか爽やかな鑑賞後感。これは承認欲求をこじらせた末の悲劇をコメディに転調させるゾーイ・ドゥイッチの魅力によるもので、今後ますます活躍が期待できそう。 最後の1本は『フレッシュ』(22)。2023年サンダンス映画祭のミッドナイト部門で上映された本作は、出会い系アプリに失望したノア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)が、スーパーマーケットで買い物中に出会ったイケメン医師のスティーブ(セバスチャン・スタン)とデートに出かけた先の恐怖を描いたホラー作品。 監督は新人のミミ・ケイブ、プロデュースにアダム・マッケイ(「メディア王~華麗なる一族~」)、撮影にパヴェウ・ポゴジェルスキ(『ミッドサマー』、『ヘレディタリー/継承』)と名匠たちがバックアップ。『ナイトメア・アリー』(21)、『28日後...』(02)、『ザ・メニュー』(22)など、名作ぞろいのサーチライトのホラー/スリラー作品。『フレッシュ』もサーチライトのロゴを背負うのにふさわしい、異色のホラー作品となっている。デイジー・エドガー=ジョーンズとセバスチャン・スタンのケミストリーが抜群によく、かつてのナンパスポットのスーパーマーケットとマッチングアプリの対比など、丁寧に練られた脚本に唸る。(LA在住エンターテイメントジャーナリスト・平井伊都子)