持ち前の勝負強さを発揮した琉球ゴールデンキングス、岸本隆一の覚悟「ここで強気に行かなかったらもっと苦しい時を乗り越えられない」
「積み重ねがすべてです。一つひとつに全力で取り組んでいくこと以外に道はない」
琉球のオフェンスは、ここぞの場面を常に任せる絶対的なエースがいるというより、試合毎に調子が良い、アドバンテージが取れるところで攻めていくスタイルだ。今回であればダーラム、今村らのドライブが最後は効果的だった。そしてチームファーストが大前提としてある中でも、この試合の岸本は勝負どころで自分が積極的に行くことを意識していた。そこには今後のポストシーズンを見据えた思いがあったと明かす。 「今日は、特に第4クォーターに入ってから自分から強く行ってやろうと思っていて、久しぶりの感覚でした。ここで強気に行かなかったら、もっと苦しい時期を乗り越えられない感じがしていました。昨日は第4クォーターでちょっと消極的だと思っていて、今日は無我夢中でやらせてもらいました」 そして、クラッチシューターとして自分にマークを引き付けることで、味方のためのスペースを生み出すことも意識しているという。「富樫選手を見ると、彼がボールを持っていること自体が脅威になっています。少なからず今日の試合では、自分がそういう役割を担っていかないといけないと思っていました」 あらためて証明された岸本の勝負強さには、千葉Jのジョン・パトリックヘッドコーチも脱帽していた。「岸本選手のクラッチスリーがありました。彼がクラッチタイムで決めたことが、琉球の勝因だと思います。第4クォーター、彼にスペースを与えてはいけないです」 ちなみにパトリックヘッドコーチは、近畿大への留学時代の繋がりによって「沖縄はセカンドホームで、30年前から講習会で来ています」と沖縄バスケットボール界との関係が長い。中でも岸本の北中城高校時代の恩師とは懇意で、岸本も高校時代にクリニックで教わったことがある。そういう背景もあって、2人は試合後に談笑していた。 岸本によると、クリニックの思い出は「当時、学生で派手なプレーとかをやりたいところで基礎的な練習が多くでしんどいなと……(笑)。ずっとフットワークをやっていた記憶があります」ときつかった印象しかない模様だ。そして「昨日は高校の恩師も試合を見にきていて、ジョンパトさんと時間がたったねという話しもしました。こういう形で戦えるのは不思議な縁だなと思います」と続けた。 難敵相手の価値ある同一カード連勝で、琉球は西地区優勝にまた一歩近づいた。連覇がかかるポストシーズンへ向け、「積み重ねがすべてです。一つひとつに全力で取り組んでいくこと以外に道はない」と岸本は意気込む。岸本のクラッチシューターとしての脅威が増すことは、琉球全体の攻撃力アップに繋がる。
鈴木栄一