東京ワイン 海と農の恵みを醸して
「今年は白用に約1トン、赤用に0.5トンのブドウを仕込みました。来春には赤白合わせて1500本を販売できそうです」。猛暑にもかかわらず、まずまずの収穫に顔をほころばせる越後屋さんは、「ほどよい酸味と華やかな香り。そして『練馬の農』を感じさせる味わいのワインになれば」と期待を込める。 24年産ねりまワインは、来年4月に行われるワイナリー10周年の記念イベントで解禁する予定だという。同ワインは毎年、発売から1カ月ほどで売り切れる「幻の名産品」になっており、今から心待ちにする人も多い。
併設レストランで地元野菜とともに
さまざまな産地のブドウを使った新酒が、続々と店頭に並び始めている。併設のレストランでは常時10種類前後のワインとともに、練馬産野菜を使った料理が楽しめる。新酒の「昼飲み」を楽しむグループ客に交じり、筆者もテーブルに着いた。 「この時期だけにしか味わえない発酵途中のワインはいかがでしょう? 甘く、微発泡でおいしいですよ」。越後屋さんの言葉に従って「フェダーヴァイサー」と呼ばれるワインを選ぶ。おつまみには、サツマイモにキャラメルソースを絡めた「キャラメルポテト」、ゆで落花生、ナスの肉詰めの盛り合わせを頼んだ。
グラスに注がれたワインは薄いピンク色に色づき、秋野菜の色合いときれいなコントラストを見せる。生まれたばかりの赤ちゃんのようなワインが放つ初々しい香りを感じつつ口に含むと、プチプチと刺激する無数の泡が心地よい。練馬の野菜に合うワインづくりを心がける越後屋さんの思いが込もっているだけに、練馬の土で育てられた旨味の濃い野菜料理との相性は抜群だ。
<深川ワイナリー東京・東京ワイナリーの詳細は、ページ下部の【関連記事】リンクを参照>
【Profile】
小杉 聡子 フリー編集者兼ライター。雑誌や企業広報誌、WEBメディアなどで編集、執筆活動を行う。2015~18年に在籍したTHE PAGE編集部(現:Yahoo!ジャパン)では、経済とエンタメ分野を担当。芸能ニュースでは500万PV超の記事を多数配信した。旅や食文化に関するルポや著名人インタビューなどに強み。