「母ちゃんこのバイクならどう!?」 ホンダの超カワイイ「ママさんバイク」の系譜 自転車みたいな“ラッタッタ”
「ラッタッタ」の呼称で知られた大ヒットファミリーバイク「ロードパル」
1950年代、「カブ」のエンジンの開発によって国内外から大きな評価と注目を浴びることになったホンダですが、その歴史を辿ると、1960年代後半以降、積極的に女性ユーザーをバイクの世界へと巻き込もうとしていたように感じます。 【超カワイイって!!】これがホンダの「ママさんバイク」たちです!(写真) 「元祖ファミリーバイク」とも言うべき女性ユーザーを意識したモペット「リトルホンダ」(1966年)をリリース。さらに「モンキー」のきょうだいモデル的存在して登場した「ダックス」(1969年)は当初、アメリカのママ向けに開発したものでもありました。 また、1970年代に入るとファミリーバイクというジャンルの原付バイクを続々とリリース。ママ世代の女性にとって、便利で画期的なバイクばかりを提供してきました。 ●ロードパル(1976年) ホンダの女性向けファミリーバイクとして昭和世代に馴染み深いモデルの一つが「ロードパル」です。 開発時、ホンダ社内では当時の女性従業員に、スーパーカブに乗ってもらい「不満点」を聞いたところ「車体が重い」「スカートで乗れない」「キックスタートがキツい」といった結構ボロカスな声が集まったそうです。 それらの不満を全てクリアすべく開発されたのがロードパルで、モペットのような細く軽いフレームとし、楽に取り回しができるように工夫。また、当時の原付としては破格の5万9800円という低価格を実現。結果的に発売年は25万台ものヒットに至りました。 また、当時はロードパルの広告戦略も熱心に行われました。特にテレビCMで打ち出された「ラッタッタ」というキャッチコピーはロードパルの通称名にもなり、当時小学生だった筆者は、後年まで「ロードパル」という名称ではなく「ラッタッタ」というバイクなのだと誤解していました。
低床系のモデルは1年ごとに成長し、名を変えた“出世魚”状態に
●バリエ(1977年) ロードパルの大ヒットで弾みをつけたホンダは、1977年に「男女ともに乗れるファミリーバイク」として「バリエ」をリリース。ホンダ独自のVベルト式オートマチック採用車で、ノーチェンジ・ノークラッチタイプ。オレンジとブラックのカラーリングは、どことなく読売ジャイアンツっぽい雰囲気があります。 低床のアンダーボーンフレームでもあり、乗りやすく扱いやすいバイクでしたが、ロードパルほどのヒットには至らず、発売翌年の「シャレット」にモデルチェンジされるカタチで生産終了。今となっては、ファミリーバイクの中でも最も希少な存在となっています。 ●シャレット(1978年) バリエで目指したとおぼしき「男女さまざまなニーズに応えるファミリーバイク」の思いは、かえってユーザーに曖昧な印象を与えたのか、後継車「シャレット」ではより女性ユーザーを意識した作りになった印象。ヘッドライトは低い位置へ移動し、その上にフロントバスケットがつきました。また、カラーリングも女性が好むような優しく淡いものとなりました。 ただし、このシャレットもまた翌年リリースの「カレン」にモデルチェンジ。バリエ以降、どんどん名前を変えていったアンダーボーンのファミリーバイクの系譜のうち、中盤に当たるモデルとなりました。 ●カレン(1979年) バリエ、シャレットに続き新たに登場した「カレン」は、その名の通り、より可憐となった印象のファミリーバイク。バリエやシャレットよりもさらにフロアステップが低くなった一方、フロントバスケットが深くなり、細部の見直しが施されているのがわかります。 ここまでの低床系ファミリーバイクの1年ごとのモデルチェンジと名称変更は、まるで出世魚のようにも感じますが、カレン以降は1983年まで、ロードパルとともにホンダのファミリーバイクの2モデルとして生産され続けました。 しかし、1980年代前半から巻き起こったスクーターブームによって、ロードパル・カレンともにその役目を終え双方とも生産終了になりました。