iPS細胞が「日本人の3人に1人が死亡する病気」を直すカギに⁉...「実用化が目前」夢のような「治療法」
夢の細胞の実用化へ
これはもしかするとiPS細胞を使った治療法では最初に実用化されるかもしれません。効果が劇的で、手術がしやすく、体の表面ですから何か変化があってもすぐわかりますから。 また、臨床応用に近い研究の一つが、パーキンソン病の治療を目指した研究です。サイラの高橋淳先生らの研究グループは、iPS細胞からドーパミン神経前駆細胞を作製し、患者さんに移植をするという臨床試験を行っています。 それから血液です。出血を止める働きのある血小板をiPS細胞からつくって、血小板の数が少ない病気の患者さんに輸血する臨床試験も行われました。 それ以外では、重症心不全や脊髄損傷、膝の関節軟骨損傷、口やのど、卵巣のがんの臨床試験が進んでいます。がん細胞を攻撃する免疫細胞をiPS細胞からつくって、それを増やしてから体内に移植してがんを治療するわけです。 谷川 がんは歳を取るに従って増える病気ですよね。いま、日本人の2人に1人がかかって、3人に1人ががんで死亡すると言われています。どこにがんができるかによって違うとは思うんですけれども、その意味では普通の病気になってきていると思います。 山中 そうですね。いまはがんが健康寿命を損なう最大の理由と言ってもいいと思います。がんは転移して、転移して、最後は全身のいろいろな部位が冒されてしまいますけれど、もともとはどこか1ヵ所の細胞が変異して引き起こされる病気です。 本来、自分の味方だった細胞が、いきなり敵になってしまう。免疫細胞が最初の「内なる敵」として攻撃しようとするんですけど、がん細胞は本当に狡猾で、免疫細胞から逃れるすべを身につけるんですよね。がんを狙って攻撃する免疫細胞をiPS細胞からつくり、がんを治療できれば、健康寿命の延長に貢献できると期待しています。 『認知症治療の「最前線」が凄すぎる…iPS細胞がアルツハイマー病に効く「驚愕の」理由』へ続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/谷川 浩司(棋士)