iPS細胞が「日本人の3人に1人が死亡する病気」を直すカギに⁉...「実用化が目前」夢のような「治療法」
人生100年時代。平均寿命が上がり続けている現代の日本では、そう遠くない未来に100歳まで生きることも当たり前になっているだろう。そんな時代にいつまで現役を続けられるのか? どんな老後の過ごし方が幸せなのか? 医療はどこまで発展しているのか? ノーベル賞学者と永世名人。1962年生まれの同い年の二人が、60代からの生き方や「死」について縦横に語り合った『還暦から始まる』(山中伸弥・谷川浩司著)より抜粋して、「老化研究の最先端」をお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『還暦から始まる』連載第3回 『「脳の細胞は増減しないんです」…意外過ぎる認知症の原因! 細胞の「レジリエンス」をあなたは知っていますか? 』より続く
iPS細胞を使った治療最前線
谷川 最初のほうのiPS細胞を使った病気やけがの治療は、いまはどこまで進んでいるんでしょうか。 山中 病気やけがの種類は山ほどあって、それぞれサイラだけでも何十というプロジェクトが進んでいて、研究者の数だけでいうと数百人も関わっています。 谷川 私たちがニュースでまず知ったのは、確か網膜の再生医療でした。 山中 理化学研究所の高橋政代先生(2024年4月現在・株式会社ビジョンケア)のチームによる加齢黄斑変性に対する臨床試験ですね。世界で初めてiPS細胞からつくった細胞を移植する手術が行われました。 それから角膜の病気に対するiPS細胞を使った研究も進んでいます。角膜がいろいろな原因で濁ってしまうと目が見えなくなります。 亡くなった方の角膜をいただけて移植すると劇的に見えるようになるんですが、日本は亡くなった方からの移植が欧米に比べると非常に少なくて、角膜も含めて移植を待っておられる方がたくさんいます。 その代わりにiPS細胞から角膜上皮細胞シートをつくることに、大阪大学の西田幸二先生が成功されていて、それを患者さんに移植する臨床試験がもう終わっています。