告発者の私的情報漏洩に対応鈍く 斎藤兵庫知事、削除依頼も告発もせず「第三者委で調査」
兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を告発した元県幹部の私的情報漏洩(ろうえい)疑惑を巡り、県の対応の鈍さを指摘する声が上がっている。私的情報とされるデータが交流サイト(SNS)で拡散した上、漏洩は地方公務員法などに抵触する可能性があり、県議会には「速やかに刑事告発すべきだ」との意見がある。ただ、斎藤氏はデータについて「本物かどうか分からない」と言及。告発やSNS運営者側への削除依頼はせず、第三者による調査を優先する姿勢を貫いている。 【グラフでみる】現在、兵庫県で進んでいる調査 漏洩した疑いがあるのは県西播磨県民局長だった男性が公用パソコンに保存していたとされるデータ。昨年11月の知事選に、斎藤氏の応援を目的に立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が同月下旬、男性の情報だとするデータをSNSで公開するなどした。 斎藤氏は12月、公開されたデータが「本物か分からない」とし、第三者委員会で調査する意向を表明。今月中にも弁護士による第三者委が設置される見通しだが、斎藤氏は「まずは(データの)同一性を確認する」とし、県の情報管理については「指摘すべきところがあればしてもらう」と述べるにとどめている。 私的情報が保存されていたとされる公用パソコンは昨年3月、斎藤氏の指示で告発文書の作成者を調べていた片山安孝副知事(当時)が男性を聴取した際、職場から回収したものだ。 6月に県議会調査特別委員会(百条委員会)が設置されると、男性は代理人を通じてプライバシーに配慮して調査するよう百条委側に依頼。百条委は、告発とは無関係な私的情報を調査の対象外とすることを決めた。 ところが7月、斎藤氏の側近である井ノ本知明総務部長(当時)が県職員や県議に私的情報を見せて回っていたと週刊誌が報道。斎藤氏は、井ノ本氏らに確認したが否定したと説明し、第三者による調査を検討しているとした。 井ノ本氏自身は10月の百条委で、男性の私的な個人情報を印刷し、所持していたことを認めつつ、漏洩については「守秘義務違反の嫌疑を受ける可能性がある」と証言を拒否。だが、百条委が12月に県議への聞き取り調査を実施した結果、井ノ本氏から私的情報の記録を見せられたといった証言が複数寄せられた。 この漏洩疑惑については県の調査が続いているが、同月25日に開かれた百条委の斎藤氏への証人尋問では、情報漏洩も取り上げられた。漏洩疑惑が浮上してから半年近くが経過している状況を踏まえ、「速やかに刑事告発することは県民の個人情報を預かる知事の責務だ」とする指摘に、斎藤氏は「第三者委で適切に対応したい」などと繰り返した。