サイゼリヤのパスタが絶好調、「値上げしない宣言」からの営業黒字を実現した意外な理由とは
「サイゼリヤ」が2023年9-11月に国内事業で2500万円の営業利益(前年同期間は4億4300万円の営業損失)を出した。原材料や光熱費、人件費が高騰する中でも「値上げはしない」と宣言。苦戦が予想されたが、早々と黒字化を果たした。 【図を見る】こんなにも違う、コロナ前・後の外食支出額の比較
営業利益率はコロナ禍前を上回る
経費削減と消費動向の変化をつかんだ巧みな戦略が奏功しているが、ライバルの「すかいらーく」が値下げに動くなど、収益力を取り戻したファミリーレストラン業界は競争が激しくなっている。 サイゼリヤは2022年8月期に4億2200万円、2023年8月期に72億2200万円の営業利益を出したが、国内事業部門は赤字だった。中国事業のほうが好調で、国内の赤字を埋め合わせていたのだ。国内事業を黒字化した意味は大きい。収益性の向上が期待できるからだ。 サイゼリヤは2024年8月期に売上高を2110億円、営業利益を131億円と予想している。営業利益率は6.2%だ。2019年8月期は6.1%だった。わずかだが、コロナ前よりも稼ぐ力は高まる見込みだ。2023年9-11月の営業利益率は6.6%で、通期予想を上回ってスタートしている。 サイゼリヤは経費削減と客数増、そして客単価の増加という3点セットが稼ぐ力の回復に寄与している。 2023年9-11月のサイゼリヤの販管費比率は52.8%。前年同期間は57.7%だ。5ポイント近く下がっている。販管費の4割程度は人件費が占めている。サイゼリヤは深夜営業の廃止し、伝統だった紙の注文方式も一部の店舗で改めている。 営業時間の見直し、デジタル化によるオペレーション改善、集計作業などの簡略化により、残業代などを大幅にカットできた可能性が高い。
サイゼリヤのパスタに思わぬ変化が・・・
客数の回復も顕著だ。2019年9-11月の客数は3800万人だった。2023年9-11月は4000万人で、6.7%増加している。なお、2019年11月末時点の国内の店舗数は1085、2023年11月末時点では1051だった。店舗は84店舗減少しているが、客数は増加しているのである。しかも、サイゼリヤは深夜帯の営業を廃止しているのだ。 24時間営業をやめることに批判的な声も大きかったが、経費削減・客数増という結果を目の当たりにすると、経営戦略においては優れた意思決定だったことがわかる。そしてサイゼリヤを語る上で外せないのが、客単価も上がっていることだ。2019年11月の729円から807円まで80円(1割)高くなっている。 値上げをしていないにもかかわらず、客単価が上がっているのは不思議な現象だが、消費動向を見ると納得ができる。下の表は、総務省の家計調査から2人以上の世帯の外食の支出額だ。2019年11月と2023年11月の月間の支出額を比較している。 外食の支出額はコロナ禍をきっかけに抑制されたと思われがちだが、結果はむしろ逆だ。飲食店での食事代は7%増加している。サイゼリヤが得意とするパスタなどの「他の麺類外食」は7.4%、洋食も1.6%高まった。