日本郵便、ヤマト運輸を提訴 120億円の損害賠償請求
日本郵便は、ヤマト運輸と「持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意」に基づき進めていた協業に関して、ヤマト運輸が一部において一方的な停止を通知し、合意に基づく義務の存在自体を争う状況となったことから、ヤマト運輸を相手方として損害賠償等請求訴訟を提起したと発表した。損害賠償の請求額は120億円。 両社は2023年6月19日に基本合意を締結。2024年問題や環境問題など、物流をめぐる社会課題の解決への貢献を目的として、メール便領域および小型薄物荷物領域において協業を進め、2025年2月までに完全移管し、両領域の荷物の全量を日本郵便の配達網で届けることとしていた。 メール便領域では、ヤマト運輸が取り扱っているクロネコDM便のサービスを当初の予定どおり2024年1月31日に終了し、新サービス「クロネコゆうメール」の取り扱いを開始している。 小型薄物荷物領域では、ヤマト運輸が取り扱っている「ネコポス」のサービス提供を2023年10月から順次終了し、2025年2月から全ての地域で新サービス「クロネコゆうパケット」を利用できるようにすることを、日本郵便としては目指していたとし、「ヤマト運輸側のシステム対応やお客さま対応の遅れなどにより、『ネコポス』から『クロネコゆうパケット』への移行は、当初計画を大幅に下回る状況が続いていました」と主張している。 一方のヤマト運輸は、2024年12月18日に「従前よりお届けするまでの日数が伸びてしまう事態が発生」しているとの理由で日本郵便に対し、「『ネコポス』から『クロネコゆうパケット』への切り替えに伴う配達委託スケジュールの見直しに係る申し入れ」を行なったことを発表した。 この申し入れについて日本郵便は、クロネコゆうパケットに関して2025年1月から当面の間、日本郵便への運送委託を停止することを内容とする計画変更の申し入れを受けたと公表。「ヤマト運輸側の一方的な事情」とし、この申し入れについて日本郵便は承諾していないと説明している。 しかし、ヤマト運輸側は合意に基づく運送業務の委託義務の存在自体を争い、一方的に日本郵便への委託の停止を進めるべく、運送委託の停止に向けたアナウンスや準備作業を進めていると日本郵便は主張。そのため2025年2月を予定していた日本郵便の配送網を活用した両社による投函サービスの全国展開については、予定どおりの実施が困難となる見込みとしている。 こういった状況から日本郵便は、「持続可能な物流サービスの推進に向けた基本合意」における合意内容である小型薄物荷物の日本郵便への運送委託についてヤマト運輸が履行義務を負うことの確認を求めるとともに、これが履行されない場合の日本郵便の損害の賠償を請求すべく、東京地方裁判所に対し、ヤマト運輸を相手方とする損害賠償等請求訴訟を提起した。
Impress Watch,加藤綾