レッドソックス田澤はなぜ成功したのか?
ファレル監督の信頼
プレーオフに入ってここまで順調に勝ち進んでいるレッドソックス。それを下支えしている一人が、田澤純一だ。 最初の5試合すべてに登板し、13日の6試合目(ア・リーグ優勝決定シリーズ第2戦)も、6回、7回、8回と、3度も肩を作った。その試合では1対5と4点ビハインドの8回にデイビッド・オルティーズが満塁本塁打を放って同点。9回は、急遽上原浩治の出番となったが、追いついていなければ、田澤がマウンドに上がることになっていたよう。 今は、勝っていても、負けていても、点差が4、5点以内なら、6回ぐらいになると、「TAZ(タズ)、肩を作っておけ」とダグアウトから連絡が入る。 もっとも田澤にしてみれば、想定内か。プレーオフが始まる前、レッドソックスのジョン・ファレル監督は、「ジュンイチとクレイグ・ブレスロー、コージには無理を強いるかもしれない」とメディアに話していた。「彼らには、普段以上に頼らざるを得ない」。
クローザー候補は上原ではなく田澤だった
頼る、の意味が毎試合というのは、やや極端だが、それだけ田澤に対する監督の信頼が厚い、ということを意味しよう。それは、シーズン通して変わらない。 5月、アンドリュー・ベイリーに続いて、ジョエル・ハンラハンが故障者リスト入りしたとき、ファレル監督がクローザーに指名したのは、上原ではなく、田澤だった。 また、6月21日、復帰したベイリーの不振に伴い、上原がクローザーとなったときも、ファレル監督は、最後まで田澤の名前が頭にあったそう。 何よりあの時、田澤を推していたのは地元メディア。ファレル監督が上原に抑え役を任せると発表した日、「ESPN.COM BOSTON」は、こんな見出しを打った。 “It should be Tazawa time”(田澤に任せるべきだ) その背景には、その時点での成績以上に、昨年の内容に対する評価の高さがある。
制球力に加えストレートは156キロ
田澤は2012年、37試合に登板すると、防御率1.43という今年の上原に匹敵する防御率を残し、さらに5個の四球に対し、三振が45個という、制球力がよく、かつ三振が取れるという、クローザーに必要な資質を持ち合わせていることを示していたのである。 四球と三振の比率(9.0)は昨季、30イニング以上を投げた投手の中で、リーグ3位。よって昨シーズンが終わったとき、ボストンの地元メディアは、田澤を今季のクローザー候補にも挙げていたほどだ。 その田澤の強みは、少し触れたように制球力。上原のようにピンポイントというほどではないが、最速97マイル(156キロ)の真っすぐは、待っていても、打てないと言われるほど力がある。多少甘くても、ボールの勢いが勝る。