“かなりリアリティのある話しになってきた” 宇宙ビジネス ―当事者が語る月面での取り組みの現在地と、 世界の中で日本企業が果たす役割とは?
月面活動における通信の重要性
議論は本セッションのタイトルにもある月面での通信技術に及び、月と地球の間の使える周波数帯の狭さや、約40万キロの距離で発生する遅延、データ圧縮技術などの課題が挙げられたが、KDDIの市村氏は、「通信の分野はアメリカが握って離さなかった分野ではあるものの、日本人の宇宙飛行士2名が月に降り立った際には、高い信頼性を誇る日本の技術が通信に使われるというポジション獲得に貢献したい。」と意欲を示した。 また、慶應大の村井教授は、「ローバーなどから取得できる大量のデータが分析に役立つ。」と述べ、通信とデータ処理が月面での活動において非常に重要と説き、月面での新しい社会や挑戦の可能性や、月面データセンター構想について語った。 一方、地球のGPSと同様のシステムを月に設置し、月面での活動を支えるための通信システムの開発は、やはり一国だけでなく世界各国が共同で行うべき取り組みとの認識で一致しており、現にアメリカやヨーロッパ各国も通信に限らず議論の内容を公開するという動きが見られることも紹介された。 またJAXAの山中氏も、JAXA「宇宙探査イノベーションハブ」という、民間企業からの技術提案などを受けることができるオープンな場があることを紹介し、会場の聴講者にも参加を呼びかけた。
次世代へと伝えたい宇宙ビジネスのリアリティと可能性
セッションの最後に慶應大の村井教授は、今回の「Internet×Space Summit」の企画に際しては多くの学生が取り組んでくれたといい、「昔と比べて、宇宙に対する憧れや夢が、この月面での活動でかなりリアリティのある話しになったので、みんなが今面白い!と思っている機運を次の世代の学生や、高校生、中学生、小学生にも感じて貰わないといけない。」と教育者としての立場を述べ、モデレーターの慶應大 神武教授も「昨年からスタートした「Internet×Space Summit」で出てきたいろいろなアイデアを共有して、より大きな議論にしていきたい。そして来年2025年もより宇宙に関する議論を増やしていきたいと思います。」とパネルディスカッションを締めくくった。 セッションの中でも度々紹介されたが、企業や大学の宇宙技術開発に “10年で1兆円”という大規模な支援を行う「宇宙戦略基金」がはじまる中、今後月面での取り組みや宇宙ビジネスはますます目が離せない。 <開催概要> Interop Tokyo 2024 会期:2024年6月12日(水)~14日(金) 会場:幕張メッセ(国際展示場 展示ホール2~6 / 国際会議場) 主催:Interop Tokyo 実行委員会 運営:(一財)インターネット協会 / (株)ナノオプト・メディア 公式ホームページ:https://www.interop.jp/