工都・尼崎のランドマーク「レンガ倉庫」解体へ 阪神電鉄開業時の面影伝え 惜しむ声も
阪神電鉄開業前年の1904(明治37)年、鉄道用の火力発電所として建てられた「レンガ倉庫」(尼崎市北城内、非公開)が近く解体されることが、同社への取材で分かった。文化財指定はないものの、開業時の様子を伝える唯一の遺産で、「工都・尼崎」のランドマーク。来年4月の開業120年を前に姿を消すことになり、惜しむ声も上がる。(広畑千春) 【写真】レンガ倉庫の3階内部。鉄骨トラス構造の骨組みと特徴的な窓が見える 同社や市立歴史博物館によると、レンガ倉庫は「尼崎発電所」として04年に完成した。3階建ての南棟と2階建ての北棟で延べ約1160平方メートル。市内に残るれんが建築としては旧尼崎紡績本社事務所(前ユニチカ記念館)に次いで古く、小屋組みには米国製の鉄骨トラス構造が使われた。 3年後には東側に増築され、つくられた電気は電灯や家庭用にも供給していたが、石炭価格の高騰で19年に発電を停止。その後は資材倉庫として使われた。84(昭和59)年に鉄道事業用ビルが建設される際、一度は撤去が決まったが、市との協議で増築部分のみにとどめられ、現在の建物が残されていた。 特徴的な窓など、趣のある赤れんがの巨大な建物は北側を走る電車の窓からもよく見え、市は2011年に「まちかどチャーミング賞」を贈呈。隣接する尼崎城(北城内)とともにフォトスポットとしても人気を得てきた。 一方、レンガ倉庫の外壁や内部は老朽化が進行。鉄道事業用ビルも耐震性に課題があり、レンガ倉庫を解体して建て替えることを決めた。既に足場を組む作業が始まっており、来年1月には解体が完了する予定。 「当時は阪神電鉄の本社など主要施設は尼崎駅一帯にあり、尼崎の記念碑的な建物で、文化的・歴史的に貴重だった。解体は残念」と同博物館。同社は「寂しいが、用地が他になくやむなく判断した。後世に伝える方法も検討はしているが、現段階では未定」としている。