ケヴィン・ベーコンは“誰とでも繋がっている”名俳優? 長く、幅広く、ハリウッドで輝き続ける軌跡をたどる
数々の映画で活躍しているケヴィン・ベーコンが、TVドラマシリーズに初主演した「ザ・フォロイング」。本作でケヴィンは、凶悪異常犯罪の連続殺人鬼を追い詰める元FBI捜査官を熱演しているが、1978年に『アニマル・ハウス』で映画デビューして以降、実にさまざまなジャンルの作品に出演し、キャリアを重ねてきた。作品ごとに存在感を発揮し、観客に強い印象を残してきたケヴィン。本記事では、そんな彼の魅力を出演作から探ってみたい。 【写真】銃を突きつけるケヴィン、迫真のノンストップ・クライムアクション「ザ・フォロイング シーズン2」より ■ハリウッドでケヴィン・ベーコンと関係のない俳優はいない!? ジュリア・ロバーツ、ケヴィン・コスナー、トム・クルーズ、メリル・ストリープ、トム・ハンクスなど、誰もが名前を知っているハリウッドの有名俳優と共演し、ケヴィン自身「ハリウッドの全員が共演者か、共演者の共演者」といった発言をしているほど、彼と繋がる俳優は多い。 俳優の名前を挙げて、その人が出演した作品の共演者を辿り、ケヴィンに行き着くまでの数字が少ないことを競う“ケヴィン・ベーコン・ゲーム”などというものが作られるほど、彼が共演した俳優の数は膨大だ。ちなみに、日本の俳優にも“ベーコン数”が“2”という少なさの人に渡辺謙と真田広之がいる。 ■世界中で一気に知名度が上がった爽やかな青春映画 ケヴィンが主演に抜擢され、ハリウッドスターの仲間入りを果たした大ヒット青春映画「フットルース」(1984年)。本作でケヴィンは、保守的な田舎町の高校に転校してきた主人公レンを演じている。レンは、ある高校生が起こした事故をきっかけに、ダンスもロックも禁止されている閉鎖的な町を変えようと奮闘する。 この作品に主演したことで、“ベーコン”という珍しい名字も相まって、彼の名前は日本でも一気に広まった。爽やかでカッコいいレンを好演したことは、40年経った今も頭に焼き付いている。最近、現在のケヴィンがケニー・ロギンスによる主題歌「フットルース」に合わせてダンスをする動画をSNSにアップしたことでも話題を呼んだ。 ■オスカー女優の主演作でも存在感抜群 アカデミー賞を3度も受賞しているメリル・ストリープと共演し、主演の彼女を食うような激演をケヴィンが披露した「激流」(1994年)。ケヴィンが演じるウェイドは、陽気な若者として登場するが、次第に異常性を露わにしていく逃亡中の強盗犯で、殺人も犯している狂気的なキャラクターだ。 迫力の激流川下りシーンに挑んだり、川に落とされても、銃を手にニヤけた顔で水中から現れたり、全編ケヴィンの見せ場が多い本作。「フットルース」とは全く違う、観客に憎まれる悪役を見事に体現し、演技の幅の広さを知らしめることとなった。 ■ライアン・ゴズリングやエマ・ストーンら人気俳優たちとも共演 長年連れ添った妻のエミリーから突然、離婚を突きつけられた中年男性キャル。途方に暮れつつも、妻への気持ちを断ち切らなければと、新たな恋に悪戦苦闘するロマンティック・コメディ「ラブ・アゲイン」(2011年)。「フォックスキャッチャー」(2014年)でアカデミー賞・主演男優賞にノミネートされたスティーヴ・カレルが主演を務め、「アリスのままで」(2014年)でアカデミー賞・主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーアがエミリーを演じる本作で、ケヴィンが扮するのはエミリーの同僚で浮気相手のデイヴィッド。 本作には、「ラ・ラ・ランド」(2016年)のライアン・ゴズリングとエマ・ストーンも出演していて、大勢のキャラクターが絡み合う群像劇となっている。ケヴィンが演じるデイヴィッドは、ごく一般的な会計士の男性で、甘いムードでエミリーを口説いたり、キャルと取っ組み合いのケンカをしたりなど、ほかの作品とは一風変わった、毒気のないケヴィンのコミカルさを味わえる。 ■絶対に関わってはいけない恐ろしい保安官を怪演 狂気の悪徳保安官に扮して、マニアックなファンも獲得した「COP CAR/コップ・カー」(2015年)。家出をしたやんちゃな少年2人が、人気のない空き地で1台のパトカー(コップ・カー)を見つける。キーがつけられたままだと気づいた2人は、なんとそのパトカーを乗り回し、田舎道を爆走してしまう。だが、その車は絶対に手を出してはいけないパトカーだった……。 ケヴィンが演じるのは、少年たちが決して関わってはいけなかった悪徳保安官のミッチ・クレッツァー。彼は私欲のためなら、殺人すら行う恐ろしい人物で、パトカーが盗まれたと分かると、執拗に少年たちを追い回す。短髪に口ひげで、サングラスにランニングシャツという風貌のミッチを怪演するケヴィンは話題を呼び、異色の主演作として語り継がれる映画になった。スリリングな不条理スリラーだが、製作総指揮も務めるケヴィンによるブラックユーモアも満載で、彼の新たな魅力を知ることができる。 ■主演ドラマでは心身ともに傷を抱えるクールな元FBI捜査官役 ケヴィンが演じる元FBI 捜査官ライアン・ハーディが、殺人鬼ジョー・キャロル(ジェームズ・ピュアフォイ)と死闘を繰り広げてきた「ザ・フォロイング」。キャロルの逮捕時、心臓に深刻な傷を負ったことでFBIを去ったライアン。たが、死刑執行を目前に刑務所を脱獄したキャロルを追うために、現場に復帰することに。 恐ろしい結末で幕を閉じたシーズン1から、さらにパワーアップしたシーズン2と、最終章となるシーズン3が、9月からCSチャンネル「女性チャンネル♪LaLa TV」で放送される。キャロルを倒したと思っても、「ジョー・キャロルは復活する」という謎のメッセージが届いたり、あちこちにキャロルの信者“フォロワー”が存在したりするため、ライアンは捜査し、戦いを続けざるを得ない。解決するまで、彼の心に平安が訪れることはない。 「ザ・フォロイング」は、心にも心臓にも傷を抱えるライアンに扮するケヴィンの繊細な演技に惹きつけられる、彼の魅力がたっぷり詰まった迫真のノンストップ・クライムアクションだ。“名優ケヴィン・ベーコン”をたっぷりと堪能できる「ザ・フォロイング」のシーズン2と3を、ラストまでじっくり楽しんでほしい。 ◆文=清水久美子