頭がいい学生は「何となく」医学部を受験? マンガ「Dr.Eggs」の世界がリアルだと話題
命の重みを感じ、覚悟が芽生える解剖実習
――2年次には解剖実習というヤマ場があります。 Kさん:解剖実習は骨学実習以上に衝撃的でした。本人や遺族の意思で献体していただいたご遺体の背中にメスを入れ、皮をはぐところから始めます。仰向けになったご遺体を班のみんなで抱きかかえて、まずはうつぶせにするという作業からスタートします。ご遺体の重みと、やらなくてはいけない使命感とで、あの瞬間に医師になる覚悟が決まったように思います。 Sさん:わかります。各班の解剖台の上に、ご献体が入った袋がズラリと置かれていたあの光景は、きっと一生忘れないですね。生まれて初めてメスを手に持ち、人の体にメスを入れていきました。僕もあの瞬間に、「ついに始まったんだ」という思いがこみあげて、ようやく医学部生になれた気がしました。 ――命の重みを感じる5カ月間の解剖実習だった、ということでしょうか。 Kさん:まさしくそうです。筋肉はどうついているのか、血管や神経はどう走っているのかなどと、体の仕組みを知るために人体をとことん解剖していきました。「ものすごいことをしているな」と思うと同時に、「ここまで人の体を使ってやるのだから、ちゃんと勉強しないといけない」という覚悟のようなものが芽生えていく5カ月間でした。 Sさん:とはいえ、課題があるので、「あの血管はどこ?」「あの筋肉を探さなきゃ」と、作業のようになってしまうときもありますよ。 Kさん:そうそう。でも要所要所で、はたと立ち止まって気持ちを新たにするようなことがある。 Sさん:そうですね。解剖実習でいえば、最後にその方の名前などを教えてもらえるのですが、そこで僕たちが解剖していたのは一人の人間であり、医学部生が学ぶために体を提供していただいたことに気づいて、「はっ」と我に返るわけです。一つひとつ学ぶたびに医学への興味や意識が深まり、3年になった今は、「どうしたらいい医師になれるんだろう」ということを考えるようになっています。 ――『Dr.Eggs』でも解剖実習の最後に行う、ご献体の合同慰霊祭までを丁寧に描いています。 三田先生:描くからには、できる限り正しい情報を入れるように心がけています。だからハサミを入れる角度一つにしても、医学部生に牛乳パックを使って具体的に教えてもらったり、慰霊祭の日のキャンパスの様子を動画に収めてもらったりしながら、僕も勉強しています。それと同時に、彼らが話す様子から、医学への興味が深まっていくのも感じ取れますので、医学部生のそんな心の動きもリアルに伝えていきたいと思っています。
朝日新聞 Thinkキャンパス