「海に眠るダイヤモンド」脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子が明かす新たな挑戦
長崎・端島、炭鉱夫、エネルギー革命、そして職業差別。今作で描かれる“職業への誇り”とは
――お二人の作品では、普段は見過ごされがちな存在にスポットを当てることが多いと思いますが、今作ではその辺りをどう描かれていますか? 野木 「取材を重ねる中で感じたのは、元島民の人たちの『端島愛』です。皆さん当時の苦労は語りながらも端島の出身であることに誇りを持っている。その一方で何十年もの間、出身を隠している方もいると聞いて。石炭なくしては成り立たない時代だったのに、炭鉱一般に対して差別的な目線もあったんですね。そうした視点は、主人公の鉄平が故郷の端島を大切にする動機としても自然だろうと、ドラマの中でもそのまま描いています」 塚原 「今作では、エネルギー革命時代の職業差別を捉えていますが、過去にも現代にも職業に対する差別や偏見は残念ながら存在します。しかし、誇りを持って仕事をしている人たちにとって悲しいこと。どの職業にも、一緒に働く仲間、やり遂げる楽しさなど、自分の職業を誇りに思える鍵があるはず。そう考えると、今回描いている炭鉱の島で生きていた彼らがどんな表情で生きていたかが、一つの答えになっていくと思います。そこが優しく伝わるように、“職業への誇り”というものを描きたいと思っています」
野木 「今作は取材に基づいたエピソードが多いのですが、キャラクター一人一人は誰かをモデルにしているわけではありません。あくまでフィクションなので、フィクションの事件が起こったりもします。1955年から閉山までの端島の史実をベースに、そこで生きる人々を描いた群像ドラマとして楽しんでいただけたらうれしいです」 長期間に及ぶ取材を重ね緻密に練られた脚本と、それを最大限視聴者に届けるために細部まで妥協なく工夫された演出。破格のスケールで制作が進む映像はもちろんだが、スタッフがクリエーターとしての誇りを持って作り上げる温かい物語が、現代社会を優しく包み込むのが待ち遠しい。
【番組情報】
「海に眠るダイヤモンド」 TBS系 日曜 午後9:00~9:54
TBS担当