「海に眠るダイヤモンド」脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子が明かす新たな挑戦
無人島を世界一の人口密度を誇った島によみがえらせる――塚原監督が挑む新たなCG撮影の挑戦
――映像化のハードルがかなり高い作品ですね。 野木 「いつもどんなに難しいシーンを描いてもなんとかしてくれる心強いチームなのですが、今回ばかりは本当に難航しているようで。柱書き(台本上で、シーンの場所や時間を指定する箇所)一つ一つに『これは無理だな…』と、無理だらけになったのは初めてのことでした(笑)」 塚原 「劇中では島のてっぺんに神社がある設定なのですが、そこでの撮影が一番難しい。同じように島のてっぺんに神社のセットを建てても、背景に映る端島の住居はCGで足さないといけません。さらに、1950年代の“緑がない端島”を再現しなくてはいけないのですが、今の日本に緑のない孤島なんて存在しません(笑)。そんな無理難題を日々どうにか乗り越えています」 ――撮影では実際にどのような工夫をされているのでしょうか? 塚原 「現在の端島では廃墟の撮影しかできないので、本作ではCG技術を駆使して再現しています。空撮の画角で端島を再現する時には、セットの一部を映像として貼り付けるような形。島を15個ほどのピースに分けて、『レゴブロック』のようなイメージで円形の島にはめ込んで、それと現代の端島をドローン撮影して全景として見せています」 野木 「実景で島のシーンを撮る際も、島そのものを探すのではなく、港や通りなど、パーツごとに必要な部分を探して組み合わせていると聞いて…これは本当に大変なことを始めてしまったなと」 塚原 「今回の撮影現場での勝負は、CGを使いながら、いかにリーズナブル&スピーディーに進行できるか。通常は主体をグリーンバックで撮影して、後からCGを合成する手法を使いますが、それには時間も予算もたくさんかかる。連続ドラマの10本の制作スピードには到底間に合いません。なので、今回は現存の端島の寸尺に合わせてCGを先に作って、現場でその角度に合わせて撮影するという方法に挑戦。時間と予算の制約によって、これまで連続ドラマでCGを使ったダイナミックな映像制作を行うのは難しかったのですが、このやり方がうまくいけば、今後の新しい撮影手法の先駆けになるのでは…という淡い期待を込めています。ある意味新たなチャレンジ企画でもあるので、温かく見守っていただけたらうれしいです。とにかく野木さんが次々といろいろと書いてくるから大変で…(笑)」 野木 「『とりあえず書いて』って言われるから、とりあえず書いているんですよ!(笑) その上で塚原さんと相談はしているし、かなり直してはいるんだけど…」 塚原 「いつも美術部さんが新しくでき上がった台本を見る時、まずは香盤表を広げて柱書きを確認するのですが、新しい柱書きが出てくると一度台本を閉じて天を仰ぎ、ひと息ついて『どこでやるんですかこれ…?』って(笑)。『…考えよう!』と言いながら、みんなで知恵を振り絞っています。でも、『ラストマイル』も同じチームで乗り越えたので、今作もなんとかなると信じています!」 野木 「台本は全て仕上がっていますが、現代に存在しない風景を生み出すために日本各地で撮影をしているので、効率的に進めないと時間が足りない。そんな厳しい撮影現場では、スタッフさんたちが映像を作るために奔走し、総監督の塚原さんが指揮を執りながら一丸となって制作してくれています」