ウクライナ出身の国際政治学者「800億円の現金と現代戦の経験こそ北朝鮮が派遣した最大の理由」
開戦から3年目に入り、1日1000人以上の死傷者が発生しているウクライナ戦争で、北朝鮮軍の派兵という最大の変数が登場した。中国とロシアの間で崖っぷちの綱渡り外交を繰り返してきた北朝鮮は、戦争で軍需品が枯渇したロシアに派兵という勝負をかけた。 1万人が派遣されたと推定される北朝鮮軍は、ロシア領土内の「クルスク回復作戦」に乗り出したとみられる。韓国外国語大学で国際政治を講義するウクライナ出身のオレナ・グセイノヴァ教授(36)に、朝ロ関係に対する分析と展望を聞いた。 【この記事の他の画像を見る】
■派兵は実用的・冷静な計算から ――北朝鮮はロシア派遣を通じて何を得ようとしているのか。 北朝鮮がロシアに軍隊を派遣することを決定したのは、マスコミがよく報道するように、2024年6月に平壌で締結された「包括的戦略パートナーシップ条約」に基づく義務ではなく、実用的で冷静な戦略的計算によるものと思われる。 北朝鮮は2017年に強力な経済制裁が科せられた後、今回の北朝鮮軍派兵で枯渇した現金を確保することができる。北朝鮮はロシアに5000人から2万人の兵力を配置することで、年間1億4300万~5億7200万ドル(約217億~870億円)の収益を生み出すと推定される。
この推定値は、ロシアが外国人新兵1人当たり4600ドル(約70万円)の1回限りのボーナスと、月給2000ドル(約30万円)を支給するという提案に基づいている。 北朝鮮政権はまた、兵士を派遣することで、現代戦での貴重な直接戦闘経験を積むことができ、ウクライナの戦場で西側の現代兵器へのアクセスを確保し、自国の軍事的ニーズに合わせて利用することができる。最近の金正恩総書記の行動、とくに韓国に対する言動は、彼が実際に戦争の準備をしている可能性があることを示唆している。
一部の情報報道によると、金総書記はウクライナでロシアが勝利していると判断した後、ウラジーミル・プーチン大統領を支援することを決定したという。金総書記の考えは単純な戦略的論理によるものかもしれない。 ロシアが勝利すれば、中国はとくにインド太平洋でより強硬な態度を示す可能性があり、これは台湾だけでなく南シナ海で潜在的な導火線となり、緊張が高まる可能性がある。 南北朝鮮ともに、アメリカや中国との安全保障条約に縛られているため、インド太平洋の不安定性は必然的に朝鮮半島につながるしかない。