徳島をJ1に導いた7月の戦術変更
もっとも、想定内だったのは徳島ばかりではない。京都も同じ展開を考えていた。負傷から間に合わせた右サイドバックの安藤淳は「うちが押し込むのは予想していたとおり。やられるとしたら、あのパターンしかないとも思っていたんですが……」と言葉を詰まらせた。 「徳島がこうした展開で勝ってきたのは知っていました」と言ったのは京都の大木武監督だ。続けて「だからと言って、攻めないわけにはいかない」と語ったが、そこに、この試合の真理があった。 ■決定的なピンチなく勝利 押し込めることがあらかじめ分かっていて、そこでゴールを決めれば勝機が高まるが、決められなければ負けが近づいてくる。結局のところ、数少ないピンチで失点したことよりも、決定機を4つも作った前半30分までにゴールを奪うだけの力がなかったことが京都の最大の敗因だった。 カウンターを狙うチームが先制すれば、その後はより一層、強みが際立つ。あとは同点を狙って前がかりに出てくる相手に対し、カウンターの色を強めればいい。後半は焦りが見え始めた京都のミスに乗じてカウンターを繰り出し、相手陣内で試合を進める時間も増えた。 後半13分には負傷を抱え、温存していたドウグラスを投入した一方で、ベテランの斉藤大介をボランチに入れ、逃げ切りを図る。京都も三平和司、原一樹、宮吉拓実といったストライカーを投入してきたが、決定的なピンチを迎えることなく試合を終わらせた。 ■前半終了時点で15位だった徳島 プラン通りの試合運びでJ1昇格を勝ち取った徳島だが、年間を通して順風満帆というわけではなかった。シーズン序盤は低迷し、半分の21節が終わった時点で15位に沈んでいた。ターニングポイントは7月だったと小林伸二監督は言う。 「前半戦は前がかりになっても効果的な攻撃ができず、逆にカウンターを受けて失点がかさんでいた。うちには前方にスペースがあった方がいいという選手が多いので、プレーエリアを少し落とし、守備をしながらゲームに入る形を取った。FWは守備をしなければならないが、反面、点がスムーズに取れるようになったと思う」 J1でのキャリアが豊富な濱田武と柴崎の2ボランチが定着したのも、この頃からだ。これによってゲームをコントロールし、後方で時間を作れるようにもなると、7月3日のコンサドーレ札幌戦から6連勝を含む、12試合無敗で、上位に一気に浮上した。