“日本共産党”の「除名処分」に対する民事訴訟が提起 争点は「結社の自由」と「言論の自由」の対立
党の「結社の自由」か、個人の「言論の自由」か
除名処分は日本共産党の「結社の自由」を守るために許容されるべきか、それとも松竹氏個人の自由の侵害にあたるため許容されるべきでないかが、訴訟の争点となる。 具体的には、党の方針を批判する内容を含む書籍の出版を除名処分の理由にすることは、「結社の自由」と同じく憲法21条に定められている「出版の自由」や「言論の自由」「表現の自由」の侵害である、と原告側は主張。 また、除名処分によって松竹氏が党首選に立候補できなくなったことは憲法15条に定められた「立候補の自由」を侵害する、とも主張している。 支部が行うべきとされている除名処分を地区委員会が行ったこと、除名処分を決定する日時や場所が明確に通知されなかったために松竹氏は意見表明をする機会が持てなかったことなど、処分に関する手続きには問題があり日本共産党の規約にも違反しているという問題も指摘。 さらに、共産党袴田事件の判例についても、政党の「結社の自由」を優先して個人の「裁判を受ける権利」を侵害する判断だと批判した。
「議論の自由を制限する党のあり方を変えたい」
「しんぶん赤旗」には、「日本共産党に対する攻撃・かく乱者としての姿をあらわにする」「松竹氏が行っている卑劣な党破壊とかく乱の行動」など、松竹氏を批判する内容を含む記事が日を置いて繰り返し掲載された。 原告訴訟代理人の堀田勇大弁護士は「しんぶん赤旗」は全国に発行されておりインターネットでも閲覧可能なメディアであることを指摘しながら、松竹氏に対する名誉毀損の深刻さを論じた。 「この裁判を通じて、自由な議論ができる状況になってほしい。議論の自由を制限する党のあり方を変えたい」(松竹氏) 訴訟が提起される前日の3月6日には、漫画評論家兼ブロガーの「紙屋高雪」としても知られる神谷貴行氏が共産党福岡県委員会の県委員に再任しなかったことが報道された。神谷氏が松竹氏の除名処分の見直しを主張していたことが問題視されたという。 1月18日の党大会で日本共産党の委員長は、前任の志位和夫氏から初の女性委員長となる田村智子氏に交代した。同日、志位氏は18年間空白であった「議長」の座に就任。23年間続いた志位委員長体制は、事実上の「院政」としてこれからも継続するという見方もある。 訴状には、被告である日本共産党の「代表者」が、田村氏ではなく「日本共産党中央委員会議長 志位 和夫」と記載されていた。
弁護士JP編集部