鳩山由紀夫元首相は、なぜ政権の運営に失敗したのか…? 「善人」が政治に失敗する「納得の理由」
「リベラルは愛であり、この愛は友愛である」が口癖だった祖父・鳩山一郎の影響を受けた鳩山由紀夫。鳩山政権は発足からわずか9か月弱しか持たなかった。だが、経験もなく実力も危うい民主党政権は、その後も菅直人、野田佳彦と計3年3か月も続き、日本の「失われた30年」を決定づけてしまった。 【写真】安倍晋三が恐れ、小池百合子は泣きついた「永田町最後のフィクサー」 なぜそんなことになってしまったのか? それは、彼が「善人」だったからかもしれない。 永田町取材歴35年、多くの首相の番記者も務めた産経新聞上席論説委員・乾正人は、いまこそ「悪党政治家」が重要だと語る。「悪人」をキーワードに政治を語る『政治家は悪党くらいでちょうどいい!』(ワニブックス刊)より一部を抜粋編集してお送りします。
迷宰相は「善人政治家」でもあった
戦後最悪の総理大臣は誰か、という世論調査があれば、鳩山由紀夫はトップスリーに必ず入るであろう「迷宰相」だった。 迷宰相であったのは間違いないが、「善人政治家」だったのも確かだ。 政治信条はもちろん「友愛」精神である。 「リベラルは愛であり、この愛は友愛である」が口癖だった祖父、鳩山一郎の影響を受けたものだが、そのもとはオーストリア・ハンガリー帝国の駐日大使だった伯爵、ハインリヒ・クーデン・ホーフ=カレルギーの息子であるリヒャルド・クーデンホフ=カレルギーの著作『自由と人生』の中で唱えられている。 鳩山は、友愛の精神を「自愛が利他を生む。意見を異にしても許容し、他者の品格を信頼し、友情を結ぶことができるという自己の尊厳が友愛精神の本質だ」と説いている。 このように恥ずかしげもなく「友愛」を唱え続けたこと自体、「善人政治家」の基準にぴったりあてはまる。 そのころ矍鑠(かくしゃく)としていた元首相、中曽根康弘は「愛とか友愛とかいって、政治はそんな甘っちょろいものではない。お天道様の陽に当たれば溶けてしまうソフトクリームのようなものだ。政治的な企ては、密かに行い、ここぞと思うときに一気に打ち出すものだ」と喝破していたのを今でも思い出す。 やはり、大勲位の見立てのほうが正しかった。