開拓者・本田圭佑のらしい決断、メキシコ・パチューカ移籍は成功するのか?
パチューカはこれまで、アペルトゥーラとクラウスーラを3回ずつ制覇。合計6度はライバルとなるクラブ・アメリカの12回、グアダラハラの11回に及ばないが、6回すべてが1999年以降に達成されていることから、近年で最も成功したクラブという評価を得ている。 メキシコリーグは財務状況に対する審査が厳格で、必然的に各チームの経営は安定している。そのなかでもパチューカは、中学から大学院修士課程までの課程をもつ学校を運営。市内ではショッピングセンターやホテル、レストランなども多角的に経営している。 豊富な資金力を背景に、元ウルグアイ代表FWのディエゴ・アロンソ監督が採用する「4‐3‐3」の布陣には、中南米各国の代表選手が配置されている。たとえばセンターバックはアメリカ代表のオマール・ゴンザレスと、コロンビア代表のオスカル・ムリージョがファーストチョイスとなる。 逆三角形型となる中盤は、アンカーにホルヘ・エルナンデス、インサイドハーフにエリック・グティエレスのメキシコ代表が君臨。特に後者は22歳にしてパチューカのキャプテンを務め、もう一人のインサイドハーフには昨夏のリオデジャネイロ五輪でメキシコの「10番」を背負ったビクトル・グズマンが入る。 1トップを務めるのは元アルゼンチン代表のフランコ・ハラ。右ウイングにはウルグアイ代表のホナタン・ウレタビスカヤが入り、メキシコサッカー界のホープ、21歳のイルビング・ロサノがPSVへ移籍した左にはチリ代表のエドソン・プッチを補強している。 右ウイングにしても新境地を開きたいとしているインサイドハーフにしても、レギュラー格の選手のレベルは高い。もっとも、本田は自ら言及した「刺激」を、独特の観点で定義している。 「未開の地みたいなところがすごく好きですし、あとは自分の知らないエリアに行くことも好きなので。いろいろな自分の考え方から来るあらゆる好奇心が、ひと言でいえば刺激に近いものですかね」 その意味では、4月に決勝戦が行われたCONCACAF(北中米カリブ海)チャンピオンズリーグをパチューカが制覇。12月にUAE(アラブ首長国連邦)で開催される、FIFAクラブワールドカップに出場できる点は本田の好奇心を大いに刺激するはずだ。 パチューカの優勝は5度目で、決勝の相手もリーガMXのティグレスだった。北中米カリブ海はヨーロッパと南米に次ぐレベルにあり、その頂点を決めるCONCACAFチャンピオンズリーグでメキシコ勢は最多となる33回の優勝を誇る。 2位がコスタリカ勢の6回という点からも、リーガMXのレベルの高さがわかる。ヨーロッパのクラブではなかった点が意外に映るかもしれないが、資金力があり、なおかつレアル・マドリードも出場を決めている世界一決定戦の舞台に立てることを考えれば、パチューカはすべての条件を満たしている。 過去に10人に満たない日本人がメキシコに挑戦。そのなかで確固たる結果を残したのが、くしくもパチューカに2005年1月から半年間在籍した福田健二(現横浜FC強化ダイレクター)だけという歴史も、本田の挑戦者魂を駆り立てるはずだ。 リーガMXは秋春制で行われ、2017‐18シーズンのアペルトゥーラの幕開けは来週に迫っている。早ければ敵地で23日に行われるクラブ・ウニベルシダ・ナシオナルとの開幕戦で、通算5チーム目のユニフォームに袖を通した本田の挑戦が始まる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)