スケートボード・ストリートで男女表彰台を独占! 日本が世界で勝てる「2つの理由」
スケートボードのコンテストとマッチした国民性
もう一つは「競技志向が強く、勤勉な国民性」である。 そもそも日本は言葉や料理ひとつをとっても、ものすごく繊細な部分を持ち合わせている国だ。その裏には勤勉で労を惜しまない国民性があることは多くの方の理解するところだと思う。 自分はそういった要素が、スケートボードコンテストにおける特性と非常にマッチしていると感じる。 一回でも乗ったことがある人ならわかると思うが、スケートボードはほんのわずかなバランスや重心の違いで成否が分かれる、99%失敗するといっても過言ではないアクティビティ。失敗に失敗を重ねた末にようやく一つのトリックを身に付けられるほど、極限までの根気と忍耐力が必要とされる。 それはスケートボードが今まで歩んできた「カルチャー」や「遊び」といった要素とは対極に位置するものである。だがオリンピック競技に採用されれば当然、競技・アストリート色が強くなってくる。今はちょうどそういった価値観が変化する過渡期にある気がしてならないのだ。だからこそ保守的な価値観によって競技としての部分ばかりが強調される日本の国民性が真価を発揮しているのではないかと思う。 文化の違う海外では、ビデオパートと呼ばれる自身のライディングカットを収めた映像作品の持つ価値が日本よりも高いため、たとえ世界選手権であろうとも、いわゆる遊びやカルチャーの延長線上で捉えている傾向が強いと感じる。 一方、日本は競技色が強く、特に中学・高校年代はその傾向が強いため、スクールからきっちり始めて真面目にコツコツ練習する。その差がこの結果を生んでいるのではないかと思う。 実際に今大会で優勝を飾った白井空良は、パリ五輪のためにプロスケーターにとって不可欠ともいえる映像作品制作をあえて封印して挑んでいたのに対し、3位の堀米雄斗は2本の作品を残している。 もしかしたら今大会は”カルチャー”と”競技”の二刀流は難しいということも、同時に証明した大会だったのかもしれない。 国際大会で日本がここまで強いと、国民感情として心配になるのが「日本人に不利なルール改正が行われないのか?」ということだ。 実はルール改正は東京五輪後に行われており、ラン2本とベストトリック5本の合計7本のうち、ベストスコア4本を採点する形式だったのが、2本のランのうち1本が必ず加算されるようになり、5本中2本のベストトリックと合わせた3本を採点する形に変更されたのだ。また1トライにつき10点満点(最高得点は40.0点)だったが、パリ五輪予選からは100点満点で採点され、小数点以下2点まで(最高得点は300.00点)採点されるようになっている。 要は、ランで失敗すると逆転の芽はほぼ潰えてしまうので、より総合力が試されるルールに変更になったのだ。ここで東京五輪を思い起こしてほしい。ランで振るわなかった堀米雄斗選手が、ベストトリックで大逆転したのは多くの人の記憶に残っているところだと思う。あくまで私見ではあるが、このルール変更は日本人対策だったのではないか?と思う。 実際に「ランが苦手」と口にする選手は多く、今回優勝した白井空良や織田夢海もそうだった。だがフタを開けてみれば、両選手とも見事にランをノーミスで終え、ルール変更の壁を乗り越えている。 日本人の競技志向と勤勉性が、ルール改正におけるハンデをも跳ね返したといえるだろう。