壮大な“風間改革”が進行中の南葛SC。関東リーグ1部のクラブとは思えない活力と熱はどう生まれているのか【スペシャルインタビュー前編】
実感する風間サッカーの浸透ぶり
関東リーグ所属とあって、自前の練習場はなく、葛飾区のいくつかのグラウンドをスケジュールに合わせて活用している。それでも前述の2グループ制など、風間監督の下で様々な仕組みを作りながら前に進んでいるのだ。 風間監督は2019年に名古屋の指揮官を離れたあと、C大阪のアカデミー技術委員長(現在も兼任)などを務めてきた。プロクラブの監督ではない目線で過ごしてきたここ数年の体験も生きているという。 「自分自身もここ数年の経験からより仕組み作りができるようになった。それは良いことだなと。40人を自分が常に見るとなったら今のやり方になるし、選手は自主トレを積めば積むほど上手くなる。そこまでの形を考えながら、今後はもっと説明を短くし、時間も短くしていきたい。 仕組みを作ると無理が比較的無理じゃなくなり、大きな可能性が出てくる。例えば午前中しかグラウンドを使えないとなっても、3時間使えるならやりようがある。練習量もコントロールできる。いつも人のせい、モノのせいにしないと言っているけど、選手も理解してやってくれているし、一番は選手が上手くなりたいと思った時に、その環境を揃えてあげること。感情や感覚を優先するわけではなく、理論と仕組みでしっかり向き合って、みんなが上手くなるように導いていければなと」 今後はアカデミー選手や、女子チーム「WINGS」の選手もトップチームのトレーニングに合流させ、クラブ全体を活性化させるプランもあるという。それは風間監督が全体を統括し、仕組みを作っているからこそできる強化方法である。 当初は40人もの選手の顔と名前を一致させることに困ったと冗談を口にするが、風間改革は力強く進行していると言えるのだ。 さらに、現場での伝え方もより変化しているという。 「ここ数年は小さい子どもから自分より年上の方まで幅広い世代に分かってもらえるように指導してきたからね。だから伝え方も変わってきている部分があり、サッカーを観たことがない人たちに『面白い』と言ってもらえるような言葉も増えているのかなと。 自分が話していて『この選手、聞いていないな』と感じることはある。でも、それは自分が聞かせることができていないだけで、こちらの力不足だったのかもしれない。その意味では、カメラマンの人や、まったくサッカーを知らない人が横にいてくれ、そういう人たちに理解してもらえる説明こそが、まさしくシンプルで求められるモノになる。 ただ過去と比べる必要はないけど、南葛の選手たちは理解も習得も早い。それは僕らがやってきたサッカーが世の中に浸透してきているということなのだと思う。選手も予備知識を入れて加わってくれているし、自分自身もアップデートして変わっている。ずっとやってきた活動が広がり、重なり、いろんなところに浸透しているのかなと」 風間サッカーのベースが広がりピッチの上で進化していく。そしてクラブとしても、さらなる壮大な目標を描いている。 ■プロフィール かざま・やひろ/1961年10月16日、静岡県生まれ。現役時代はドイツやマツダSC(現・広島)などでプレー。引退後は解説者などを務めた後、川崎、名古屋を指揮。独自のサッカー哲学で注目される。C大阪アカデミー技術委員長との兼任で南葛SCの監督およびテクニカルダイレクターに就任。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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