元乃木坂46・伊藤万理華の魅力爆発…想像を痛快に裏切る展開とは? 映画『チャチャ』徹底考察&評価
酒井麻衣が監督・脚本を手がけ、伊藤万理華が主演を務める映画『チャチャ』が現在公開中。人目を気にせず、好きなように生きる主人公・チャチャの一風変わった恋を描いている本作。今回は、前半と後半で物語がガラッ変わる演出や、チャチャのキャラクター性について徹底的に解説する。(文・前田知礼)【あらすじ キャスト解説 考察 評価】 【写真】伊藤万理華が超可愛い…貴重な未公開写真はこちら。映画『チャチャ』劇中カット一覧
風変わりなチャチャの物語
2021年夏、全ての映画ファンは"伊藤万理華"に恋をしたと言っても過言ではない。 映画作りに青春を燃やす時代劇オタクの高校生・ハダシを好演した映画『サマーフィルムにのって』がスマッシュヒット。時同じくして、チェーン店のグルメ・通称“チェンメシ”とラジオが大好きな主人公・高村美園を演じたテレビドラマ『お耳に合いましたら。』も放送された。 自分の“好き”にまっすぐで、早口で“好き”への愛を捲し立てる彼女の姿に、映画ファンたちは自らを投影せずにはいられず、瞬く間に伊藤万理華に夢中になった。そんな、あの夏、伊藤万理華に恋した勢に必見の映画が、10月11日に全国公開された酒井麻衣監督の『チャチャ』である。 小さなデザイン会社で働くイラストレーター・チャチャ(伊藤万理華)と、同じビルのレストランで働く樂(中川大志)によるビザールラブストーリー。“風変わりな恋のお話”という直訳の通り、屋上でばったり出会ってひょんなことから同棲生活が始まるという火ドラ(TBS火曜10時の恋愛ドラマ枠)の第1話のような王道ラブストーリーは前半まで。後半は予期せぬ方向へとストーリーが転がっていく。
「チャチャ」というキャラクターの魅力
本作の魅力はなんと言っても主人公・チャチャのキャラクターだろう。 個性的な服装に、ふわふわとした歩き方、オフィスだろうが関係なく顔を絵の具でカラフルに汚しながら絵を描く...自分らしく好きなように生きるチャチャの姿は、精力的に個展を開くアーティスト・伊藤万理華自身の姿とも重なる。 重なるからこそ、常に地面から少し浮いているような、非現実的な“チャチャ”というキャラクターを、ギリギリの実在感を保ちながら体現できたのだろう。 しかし、そんなチャチャは“ただの浮世離れした天然ちゃん”とは描かれていない。自分に向けられるいじわるな視線や陰口にも実は気づいている。 それを象徴するのがオープニングで、デザイン事務所の同僚によるチャチャへの陰口をしばらく観客に聞かせたあと、カレーパンを齧るチャチャの「聞こえてるんだが」というモノローグと画面にタイトルロゴが映されて、音楽が流れ出す。 この一枚上手感が、チャチャの「天然ではあるが俯瞰で自分を見れている人物」であることを見事に表現していて、そんな強いチャチャに観客は一気に引き寄せられる。 そもそも好きな服を着ていて自由に生きるのは当たり前の姿であって、自分らしく生きているだけで“不思議系”だの“天然”だのと言われるのがちゃんちゃらおかしいのだ。だからこそ、天然不思議系キャラでありつつ、そんな自分を客観視もできているチャチャという主人公に観客は魅了される。