平成の大合併、名称巡るひずみが表層化。兵庫県篠山市の改名騒動
平成の市町村合併では、市町村間で合併後に誕生する新しい自治体について協議を重ねられました。法定協議会での話し合いは、上下水道やインフラ整備、公共施設の使用料など多岐に渡りますが、もっともセンシティブな問題だったのが合併によって新しく誕生する自治体の名称です。 例えば、A市とB市が対等な立場で合併する場合、新しい市の名前がそのままA市だったらB市の市民は吸収合併されたという印象を抱くでしょう。だからといって、まったく新しいC市を名乗っても「馴染みがない」「地元の伝統を無視している」といった不満が出ます。 こうした経緯から、平成の市町村合併では合併後の自治体の名称を巡って破談になるケースも多く見られました。新市名で一悶着しても、最終的に丸く収まった市町村もあります。しかし、実はそれは丸く収まったかのように見えていただけでした。平成の市町村合併が終わりを告げてから約10年。今、そのひずみが表層化しつつあります。
合併の模範生と呼ばれたことも
一件落着したように思えた合併協議ですが、篠山市の誕生から約20年の歳月を経て再び紛糾する気配が漂っています。篠山市は江戸時代から城下町として栄え、現在でも趣ある街並みを残していることから観光地としても人気があります。また、全国的な知名度を誇る丹波の黒豆は、篠山市の名産品です。 篠山市が発足してから5年後、今度は篠山市の西隣に位置する氷上郡柏原町・氷上町・青垣町・春日町・山南町・市島町の6町が合併。新たに丹波市として市制を施行しました。丹波市の誕生により、“丹波”のブランドイメージが丹波市独自のものと解釈されるようになったのです。そのため、篠山市の情緒ある城下町や丹波の黒豆の産地という、篠山市のイメージが薄れました。ブランドイメージが薄くなれば、観光業や地場産業にも大きな影響を及ぼし、経済的なマイナスも出てきます。 こうした事態に接し、篠山市は改めて“丹波篠山市”に市名を改称することを検討したのです。篠山市は、すでに市内の自治会や企業などとも話し合いを進めています。