出撃後ほぼ「全滅」日本海軍潜水艦の最大欠点、攻撃をかわす長時間潜行が可能な空調があったら
つまりは、4日間ほど潜航できれば生存率は大幅に高まったのである。最初の1日でアメリカの駆逐艦を出し抜く。次の2日間、2・3日目に潜航を続けて脱出を続ければ、4日目には周辺海面は安全になっている。そうなれば浮上しても差し支えはない。 真上にアメリカの駆逐艦が待ち受けていることはないし、レーダーで探知される可能性も低くなっている。そこで換気を行いエンジンを起動して電池を充電すれば、再び4日間の潜航も可能となる。
しかし、日本潜水艦にはその4日間の潜航ができなかった。潜ってさえいれば生き残れた。それにもかかわらず空調不備で浮上せざるをえなくなった。そのために沈んだのである。 ■乗員ミスによる沈没も減る 第2は、乗員のミスも減ることである。日本潜水艦が空調完備であれば艦長以下の判断ミスによる回避失敗や、誤操作による沈没事故の可能性も減る。 艦内の環境悪化も、日本潜水艦が沈んだ原因と推測されている。駆逐艦に追い立てられている間に二酸化炭素濃度が上がり、各種の発熱で湿度100%のままで室内温度は40度まで上昇してしまう。
そうなると判断力は低下する。回避動作は緩慢となりその際の誤判断、機材誤操作も生じる。それにより沈没の可能性は高まるのである。 アメリカの駆逐艦から辛くも逃げ切った潜水艦の乗員も、その旨を述べている。変わったところでは、紛れ込んだネズミも呆然としてしまい逃げようとしなくなったという話もある。これも先に述べた「厄介な乗り物としての潜水艦(2)」で紹介されている。 そして、空調によりこれが解決する。二酸化炭素除去とある程度の冷房と除湿で、問題の大部分は解決する。判断のミスや緩慢化、機材操作ミスによる潜水艦損失は減少する。
ちなみに酸素濃度が低下する問題もある。ただ、それに関しては当時の日本潜水艦も含めて高圧酸素タンクや酸素キャンドルで解決できていた。 第3は、対応ノウハウの確立と洗練である。日本潜水艦が沈んだ最大原因となった空調不備が改善すれば、生き残る潜水艦の数は一挙に増える。これは第1と第2として述べたとおりである。 それにより戦闘における教訓も多く持ち帰ることができるようになる。その結果、アメリカの駆逐艦への対応方法も進歩するため、生き残る潜水艦はさらに増えるのである。